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「BLUE TOKYO」青森公演(上) 新体操+ダンス 新感覚の舞台
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「BLUE」は芝居的な要素をふんだんに取り入れた舞台公演。新体操もダンスも一つのツールに過ぎない=2015年1月25日、青森県青森市堤町の「リンクステーションホール青森」(田中幸美撮影) これは月へ行った鴉(からす)の物語。世界に否定された者の存在を証明するための旅…。
ナレーションが終わると、舞台の左右から、後方からバック転や後方宙返りで、突然9人の若者がまるで空から舞い降りたように現れた。
男子新体操とダンスを融合させた新感覚のプロパフォーマンスユニット「BLUE TOKYO(BT・ブルートーキョー)」が1月24、25の両日、青森市で行った舞台公演「BLUE」の1シーンだ。
BTは青森大学新体操部OBによるユニット。2013年からスタートした舞台「BLUE」は地元凱旋公演で、1年で最も青森らしい冬のこの時期に開催。BTに加え、大学王者の青森大学と系列の名門、青森山田高校の新体操部、ジュニアによる「BLUE TOKYO Kid’s」が出演した。
過去2回の公演は、学生がメーンとなった新体操とダンスの発表会という趣だった。しかし、3回目となる今回は、人間国宝で歌舞伎役者の坂東玉三郎(64)が絶賛するダンスカンパニー「DAZZLE(ダズル)」を特別ゲストに迎え、主宰の長谷川達也さん(38)が振り付けだけでなく、脚本と演出を担当。DAZZLE作品と同じように、出演者がせりふを口にすることはないものの、全編にナレーションをかぶせた明確なストーリー仕立てで、ダンスや新体操の動きに芝居的な要素を取り入れた作品となった。
BTリーダーの大舌恭平さん(26)は、「今回は本当に舞台という感じ。自分なりに芝居をしました。1回目と2回目も楽しかったけど、今回は比較にならないほど楽しかった」と手応えを感じた様子。主役を演じた佐藤喬也(たかや)さん(25)も「実はお芝居が好きなんです。ですから違和感なく入っていけました。ここはどんな風に演技しようかなと迷いながら考えて。その過程が楽しかった」と話した。
≪空高く跳べ 世間に認めさせるために≫
「BLUE」の紡ぐ物語はこうだ。
人口規制政策に反して生まれた子供たちは「廃児(はいじ)」と呼ばれ、捨てられて鴉(からす)に育てられた。主人公の少年もそんな廃児の一人。大量の資源を搾取した結果、重力が増して人々が大地にひれ伏す現象が起きる中、少年は跳ぶことを覚える。曲芸をしながらスリを働く廃児たちの「跳芸団(ちょうげいだん)」に加わるが、仲間と別れて月へ向かうシャトルに乗り込み、自らの存在を証明する旅に出る-。
まるで近未来SFを思わせるストーリーになっている。
演出と脚本を担当した長谷川達也さんは、新体操は「重力に抗(あらが)って跳ぶ」競技という印象が強いといい、それを物語に込めたと話す。素晴らしい技術で同調性に優れ、見る者を感動させるのに、認知度は低く競技人口も少ない。「まるで30年前のストリートダンスのような境遇だ」とも。
「BLUE」公演は、そうした新体操界の現状を改善し、新体操を青森の文化として構築する一助にしようと始まった。「BLUE TOKYO」も、大学卒業と同時に競技から離れてしまう選手たちのその先の道を作ろうと2010年に結成された。
そうした背景を知った長谷川さんは「新体操がプロとして成立するような文化になるお手伝いができれば」という思いで演出を手がけたという。物語の中核をなす「廃児」は、世間に認められない子供たち。それが自分を認めさせる存在となって空を跳ぶことは、市民権を得て飛躍するようにと新体操へ送るエールでもあるのだ。
演出にあたってはプロフェッショナルとしての意識が感じられるような舞台にしてほしいと注文されたという。新体操の競技者が舞台のプロになるということは競技者から“表現者”へと変わること。フォーメーションにおける自分の立ち位置を的確に把握し、ミスなく高得点につなげる演技から、物語の中に自らを置き観客に対してその思いを伝える演技への転換でもあったという。長谷川さんは「出演者の技術が高いので予想以上のものができているのでは」と満足そうに話した。
公演は、EXILEのUSAとTETSUYAをはじめ、メンバーがバックでパフォーマーを務める歌手の浜崎あゆみ、フィギュアスケート関係者などが鑑賞した。TETSUYAは、「ハイセンスでハイクオリティーな演技にただただ魅了されました」とフェイスブック上でコメントした。
ダンスと新体操のただの融合ではなく、新たな舞台芸術を提示した「BLUE」。たった3回の公演だけで青森の雪に埋もらせてしまうのでなく、再演して多くの人にこの世界観を共有してほしいと切に思う。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS)