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科学
3D筋肉細胞培養の未来 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
再生医療は、今まで不可能と思われていたものを現実にしつつあります。「培養筋肉で指の動き成功 人工関節を曲げ伸ばし 東大チーム」(2014年11月12日 産経ニュース)という報道がなされました。竹内昌治(しょうじ)先生(東京大学生産技術研究所)の研究室でラットの筋肉細胞を立体として3次元(3D)的に培養して関節につないだところ、実際の関節のように曲げ伸ばしができるようになったとのことです。
加齢によるロコモティブ症候群(ロコモ)が問題になっています。ロコモは「運動器の障害」により、「要介護になる」リスクの高い状態になることです。整形外科学会によると、日本では数千万人がわずらっており、国民病と言ってもいいほど頻度の高いものです。
「運動器の障害」は、骨粗鬆(こつそしょう)症や関節炎、関節の変形など「運動器自体の疾患」と、手足のまひや関節の大きな障害などがないにも関わらず日常動作が低下する「加齢による運動器機能不全」に分けられます。この2つが混在することも良くあります。
体を動かさなくなると筋肉はやせて細くなり(筋萎縮)、関節の動きも悪くなっていきます(関節拘縮(こうしゅく))。私たち神経内科医は、脳卒中の患者さんをたくさん拝見します。治療とへ移行して可能な限り急いでリハビリテーションを導入します。その人の筋肉が萎縮し、関節拘縮が起きることを最小にとどめるためです。
このように運動能力が低下すると、さらなる運動機能の低下を招くという悪循循環に陥りやすくなります。いったん運動能力が低下してしまうと、そこから鍛え直していくのも難しくなります。ロコモもその一つです。そのため地方自治体では、いったん発症してしまうと厄介なロコモを健康体操などで予防することに力を入れています。メタボリックシンドロームによる認知症や合併症の予防を兼ねて、50~60代からそれぞれの体に合った運動を継続する必要があります。
今回の3次元的に筋肉細胞を培養し機能させるという技術は、たとえ筋肉が萎縮してしまっても、その人の細胞で補完できる可能性が出てきたことを示しています。運動機能低下の悪循環から脱出するすばらしい進歩です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)