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道徳「考え、議論する授業」へ 指導要領改定案 「国への愛着」小1から 国際化対応

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道徳「考え、議論する授業」へ 指導要領改定案 「国への愛着」小1から 国際化対応

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小学校での道徳授業の様子。2018年度以降の教科化に伴い、文部科学省は「考え、議論する道徳授業」への転換を求めた=2012年2月8日、茨城県水戸市(三保谷浩輝撮影)  文部科学省は4日、2018年度以降に教科化される小中学校の道徳について、学習指導要領の改定案を公表した。国際化やいじめ問題などに対応した指導項目を新たに追加したほか、授業で討論や意見表明などの言語活動を充実させることや、問題解決型学習を取り入れるよう明記。現行の道徳教育では、読み物中心の形式的な授業が広がっていることを踏まえ、「考え、議論する道徳授業」への転換を求めた。

 改定案では、学年ごとの指導内容について「善悪の判断」「相互理解、寛容」「公正、公平」などのキーワードを示し、教員が何を教えるのか理解しやすいよう記述を明確化した。

 現行の指導要領で、小学3年以上としている「国への親しみや愛着」を、小学1年から前倒しして教育するよう改めたほか、いじめ問題対策のため、小学校低学年から「公平性」を教えるなど、近年変化が著しい国際化や社会問題に対応した記述を追加した。

 指導方法についても多くの部分で変更を加えた。急増するインターネットを使ったいじめなどに歯止めをかけるため、「情報モラル」の指導を「留意する」から「充実する」に強めた。

 中央教育審議会の答申で「読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われる例がある」との指摘を受けたことから、授業で児童生徒が課題を自ら見つけ、自力で解決する問題解決型学習の導入など、より実践的な教育を行うよう強調した。

 導入される検定教科書についても、特定のイデオロギーによる偏向教育を防ぐため、「特定の見方や考え方に偏った取り扱いがなされていないもの」との留意事項が新たに明記された。

 文科省は「“読み物道徳”とも揶揄(やゆ)される現行授業から、考え、議論する道徳への質の転換を進めたい」としている。

 改定案は3月5日まで意見公募(パブリックコメント)にかけた上で、3月下旬に新指導要領として告示される。道徳は「特別の教科」として小学校で18年度、中学校で19年度から導入される見通し。

 ≪「国への愛着」小1から 国際化対応≫

 文部科学省が4日に公表した道徳の教科化に伴う学習指導要領の改定案は、小学1、2年の学習内容を「わが国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつこと」と明記し、現行の指導要領にはなかった「わが国」の文言が追加された。改定後は低学年向けの教材で、日本文化などの取り上げが可能だ。急速に国際化が進む中、子供たちがより早い時期から日本人としての「自己像」を描きやすくすることで異文化理解を深める狙いがある。

 現行の指導要領では、「国への親しみや愛着」を教える授業は小学3年以降から開始することになっており、1、2年は子供たちにより身近とされる「郷土」の学習にとどまる。

 文科省が作成し、昨年4月に全国の小中学校に配布した「私たちの道徳」の3、4年向け教材では、郷土の紹介と併せ、和服や和食など日本文化や節分などの年中行事が写真入りで掲載され、外国文化と比べながら学べる項目が設けられている。明治時代に活躍したギリシャ出身の日本研究家、小泉八雲(やくも、ラフカディオ・ハーン)の評伝コラムにも2ページを費やしている。

 一方、1、2年向け教材では、郷土を紹介する新聞作りや、京都の祇園祭の紹介を通して郷土への親しみを教える内容にとどまり、「日本」の文言はみられない。文科省によると、改定後は低学年向け教材でも、日本文化に精通した人物の紹介などが可能となる。

 「国への親しみや愛着」の学習を前倒しした背景について、文科省は「異文化理解の前提には、自国の文化への知識が不可欠」と説明。現行の指導要領にない「他国の人々や文化に親しむこと」も新たに追加されており、「日本社会の国際化のスピードは想像以上に速く、子供たちにより早い段階から日本人としての意識を持ってもらう必要がある」と強調した。

 グローバル人材の育成は政府の教育再生実行会議が提言した教育改革の主要施策の一つ。文科省はすでに英語教育を小学3年から必修とした上で、5年から教科化する方針を公表しており、「改定案は英語教育の前倒しとも連動している」という。(SANKEI EXPRESS

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