ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
地球最長寿のクジラ DNA修復遺伝子が鍵 ゲノム解析で判明、人間に応用も
更新
水面上に躍り上がるホッキョククジラ。科学者による遺伝子研究で、200歳まで生きる長寿の秘密がみえてきた(ケイト・スタフォードさん提供、ロイター) 最大で200歳まで生きるとされるホッキョククジラ。科学者がその全遺伝情報(ゲノム)を解析した結果、損傷したDNAの修復などをつかさどる遺伝子が他の哺乳類のものと異なっていることが分かった。今後、これらの遺伝子の解明を進めることで、人間の寿命を延ばしたり健康状態を改善させたりすることができるといい、研究者の間で注目を集めている。
論文は米科学雑誌「セル・リポーツ」に掲載された。それによると、ホッキョククジラが他の哺乳類と異なっていたのは、DNAの修復のほか、細胞分裂の周期やがん細胞などをつかさどる遺伝子。これら特定遺伝子のメカニズムを解明することができれば、ホッキョククジラが持つ驚異的な長寿の謎に迫れるという。
研究を主導した英リバプール大学の遺伝学者、ジョアン・ペドロ・デ・マガリャエス氏はロイター通信の取材に「ホッキョククジラが持つDNAを補修したり、病気を治す遺伝子の正体を突き止めることによって、われわれは長寿や健康の秘密を知ることができ、その知識を人間の健康の改善や生命の維持に生かすことができる」と今回の研究成果を強調する。
ホッキョククジラは、150~200歳の寿命を持つ地球上で最も長生きとされる動物。全長は18メートルに達し、体重は地上最大の生き物であるシロナガスクジラに次いで重い。クジラの中では攻撃的ではなく、オキアミや動物プランクトンを餌にしている。単独か最大6頭ほどの小さな群れで移動を行うことが分かっている。
特に特徴的なのがその寿命の長さだ。100歳まで生きることで知られるガラパゴスゾウガメやムカシトカゲの倍近くもあり、60~70年とされる他のクジラの寿命をはるかにしのぐ。その寿命の長さから、メスは更年期障害に陥るといわれているほどだ。
今回の研究では、ホッキョククジラの体温調節をつかさどる遺伝子に変異の跡が見られることも分かった。他のクジラが繁殖や餌のために地球規模の移動を繰り返すのとは異なり、ホッキョククジラは一生を極寒の北極海周辺で過ごす。そのためか、ホッキョククジラの体温は極端に低いことで知られ、動物は体温が低ければ低いほど長寿になるという説が唱えられてきた。この辺りにもホッキョククジラの長寿の秘密が隠されているかもしれない。
ホッキョククジラは長寿なだけでなく、病気への耐性が極端に強いことでも知られる。コペンハーゲン大学の生物学者、マッツ・ピーター・ハイデ・ヨルゲンセン氏は「ホッキョククジラは細胞レベルで人間より強い腫瘍への抵抗力を持っていることが今回の研究で明らかになった」と説明する。
人間など他の哺乳類との遺伝子上のさまざまな違いがみえてきたホッキョククジラ。より良く年を取りたいなら、人間よりはるかに長寿であるホッキョククジラの遺伝子に学んでおいて損はなさそうだ。(SANKEI EXPRESS)