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【アラスカの大地から】地球のはずれで病気になったら…

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【アラスカの大地から】地球のはずれで病気になったら…

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まどろむヒグマ。休息の重要性を本能で知っているのだろう=2011年7月15日、米アラスカ州(松本紀生さん撮影)

 「病気になったらどうするのですか」。数えきれないほど多くの人たちから尋ねられてきた。病院はおろか建物も道路もなく、人さえもいない地球のはずれでひとりでキャンプをするのだから、心配されるのも無理もない。

 備えはこうだ。もしもの時に助けを呼べるように衛星電話を持っている。これがあれば絶海の孤島からであろうが厳寒のかまくらの中からであろうが電話がかけられる。日本の携帯電話の相手とクリアな音声で会話ができるのだから、その品質は申し分ない。

 ただ滞在する場所が場所だけに、電話をかけてもすぐに助けが来てくれるわけではない。悪天候で1週間セスナが飛べないことなどざらにある。

 そうなるといかに病気を悪化させないかも重要になる。鎮痛剤や風邪薬はもちろんのこと、大量の抗生物質も欠かせない。アラスカへ出発する前には1カ月分の抗生剤を買い込むのが恒例となっている。

 ≪不調を感じたら地面に寝転がる≫

 ただ実際にはキャンプ中に病気になったことはこれまで一度しかない。その一度も、町へ戻る間際に不調を感じ始め、ホテルで寝込んだというものだ。

 ではなぜキャンプでは体調を崩さないのか。長年にわたり日本とアラスカを行き来するうちに、分かってきたことがある。

 キャンプ中は不調を感じたらすぐに休めるのだ。誰と約束があるわけではない。絶対にこなさなければならない予定があるわけでもない。地面にゴロンと寝転んでもとがめる人もいないのだ。体のだるさや頭痛、寝不足や悪寒に襲われることもあるにはあるが、調子がよくないと気づけばその場で休息がとれ、しばらくすると解消されるのが常である。

 これが日本にいるとそうはいかない。疲れていても休めない。無理を重ねるうちにその疲れが具体的な疾患として体を蝕んでくる。結果、処方された抗生物質はもっぱら日本で服用するようになった。

 病気になりたくなければアラスカの原野へ、というのは言い過ぎだろうか。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS

 ■まつもと・のりお 写真家。1972年生まれ。愛媛県松山市在住。立命館大中退、アラスカ大卒。独学で撮影技術やキャンプスキルを学ぶ。1年の約半分をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島、冬は氷河の上のかまくらでひとりで生活しながら、撮影活動に専念する。TBS「情熱大陸」で紹介される。著書に「原野行」(クレヴィス)、「オーロラの向こうに」「アラスカ無人島だより」(いずれも教育出版株式会社)。日本滞在中は全国の学校や病院などでスライドショー『アラスカ・フォトライブ』を開催。matsumotonorio.com

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