SankeiBiz for mobile

類縁性感じさせる有効な展示 「ダイアローグ-対話するアート」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

類縁性感じさせる有効な展示 「ダイアローグ-対話するアート」

更新

猪熊弦一郎「猫と二人の子供」1952年(群馬県立館林美術館蔵、提供写真)。(C)公益財団法人ミモカ美術振興財団  【アートクルーズ】

 複数の作品を並べてみる。すると作品同士が語りだす。鑑賞者は比較することで、作者あるいは作品同士の関係や技法、テーマについて深く考え、詳しく知ることになる-。これまでにもありそうでなかった展覧会「ダイアローグ-対話するアート」が、群馬県立館林美術館(群馬県館林市)で開かれ、今後の有効な展示法を提案してくれている。

 猪熊弦一郎(1902~93年)の「猫と二人の子供」とパウル・クレー(1879~1940年)の「子どもたち」。子供をモチーフにしているという共通点はもちろんあるが、2つの絵から感じられる楽しさ、ユーモア、温かさに同質のものを感じないだろうか。

 2人は直接の交流はないが、創作活動や画家人生でいくつかの共通点が見いだされる。松下和美学芸員によれば共通点は、子供を描いたこと以外に、具象画から抽象画に向かったこと、「手」にこだわりを持っていたことだという。

 とくに、手へのこだわりは、猪熊が古い人形などを集め「手元に吸い寄せられ(集まっ)てきた」と語り、クレーも10年間、息子にぼろ切れで指人形を作り続け、2人は「手の中のエネルギー、宇宙が創造の源泉だった」(松下学芸員)という。

 今回は猪熊、クレーと共通点のあるヘンリー・ムーア(1898~1986年)の彫刻も合わせて展示している。

 直接の交流があった作家としては、ベン・ニコルソン(1894~1982年)、バーバラ・ヘップワース(1903~75年)、フランソワ・ラフランカ(1943~)らを紹介している。

 ニコルソンとヘップワースは一時、生活をともにし、ラフランカはニコルソンとの出会いから作家人生が始まった。ニコルソンのエッチング、ヘップワースの彫刻、ラフランカの絵(エンボス)には3者がそれぞれ影響しあった痕跡が垣間見られる。

 「共鳴」や「違い」を

 画家と詩人が“共鳴”して作り上げた詩画集も面白い。ジョアン・ミロ(1893~1983年)は、ダダイスムの詩人、トリスタン・ツァラ(1896~1963年)の詩「独り語る」に触発されて挿絵を描き、レジスタンスの詩人、ウージェヌ・ギュヴィック(1907~97年)はジャン・デュビュッフェ(1901~85年)のプリミティブな画風に魅せられて、詩「壁」の挿絵を頼んだ。

 また、アンディ・ウォーホル(1928~87年)の「危機に瀕した種」とグラフィックデザイナー、永井一正(1929~)のポスターは、同じ動物を扱いながら、ウォーホルの写真をもとにしたポップな作風と永井の個性的な手仕事の違いが際立ち、興味深い。

 さらに、フランスの若手作家、モリーン・コロマール(1984~)が、美術館のコンセプト「自然と人間の関わり」をテーマと対話するインスタレーションを展示している。

 総展示数は、作家約30人の約70点。数点を除き、大半が群馬県立館林美術館の収蔵品で占められている。松下学芸員は「日ごろ資料を調査する上で分かってきた情報やヒントを展示の中に生かしてみた。実際に作品同士の類縁性を感じられるものも多かった」と振り返った。今後、こうした展示がもっと増えてもいい。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 「ダイアローグ-対話するアート」は4月5日まで、群馬県立館林美術館(群馬県館林市日向町2003)。一般300円。月曜日休館。(電)0276・72・8188。

ランキング