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知ってほしい 学校を休む権利 体験もとに不登校の小冊子を発行 彦田来留未さん
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繊細で柔らかい感受性と、深く思考する力、芯の強さを併せ持つ彦田来留未ちゃん(左)と一緒に一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづるもジャンプ!=2015年1月24日(越智貴雄さん撮影、提供写真)
くるみちゃんこと彦田来留未さんは、NPO法人ハイテンションの福祉事業所で働き、究極のバリアフリーロックバンド「サルサガムテープ」のメンバーとしても活躍している。くるみちゃんの声は、そのスマートな体形と同じように細い。が、言葉を選びながら切々と話す姿に、芯の強さを感じる。その強さはどこからくるのだろうと思っていた。去年の春、くるみちゃんが「体験をもとにして作ったんです」と、『不登校の子どもの権利宣言』(www.shure.or.jp/kenri)という小冊子をくれた。そこで初めて彼女が不登校だったと知った。
最初に行けなくなったのは4年生のとき。転校した学校の雰囲気が苦手だったが、「行かなきゃ」というプレッシャーがあり、ご飯が食べられない、眠れない。さらに、おなかが痛い、熱が出ると体調が悪くなり、ある日「もう無理。布団から出られない」という状態になった。「嫌だという気持ちを言葉にできなくて、布団の中で泣き続けるしかなかった」と振り返る。
家にいても、「みんなが学校に行く時間に自分は布団の中にいる。罪悪感や焦りが消えず、毎日、胃が重たい感じだった」。その時は、「自分は生きている価値のない人間だと思う」とまで家族に伝えていたそうだ。
そんな状況を見かねた家族が「もう学校いいじゃない」と決断したのは、行けなくなってから半年後。「給食費を払うのをやめよう」と決めたのがきっかけだったという。
くるみちゃんの人生を変えたフリースクール「東京シューレ」との出会いは5年生のとき。6歳から21歳までの人たちが、自由に楽しそうに通う様子をみて、「ここなら通いたい!」と思った。けれども半年ほど通い、再び家で過ごす生活を始める。「学校で感じていたストレスがどっと出て、休もうと決めた」
それから4年間、自分と向きあって過ごす。「母が家で安心して過ごせる場をつくってくれたので、昼夜逆転で、絵を描いたり、裁縫したり、お菓子をつくったり、ひたすらやりたいことをやった」。少しでも外出するとおなかが痛くなる時期もあったが、やがて「働く中で学んでみたい」と、たい焼き屋さんでバイトを始める。大好きなお菓子作りの経験を生かすことができ、得意なイラストでポップをつくらせてもらって、「働くって面白い」という実感を得ていく。
そんな体験から「学校に行くことだけが日本の子供にとって幸せなのかな」と考え、再び通いはじめた東京シューレで、仲間たちと「子どもの権利条約」を学び、「不登校の子どもの権利宣言」にまとめた。
冊子はグッとくる内容だった。不登校を選ばざるを得なかった子供たちの、声にできない叫びや涙が詰まっていた。生きづらさのあまり高校3年間の記憶がほとんどない私も、この宣言を手にしていたら、どんなに救われただろう。子供にも安心して“休む権利”があるなんて発想もなかったのだから。
くるみちゃんは「無理して通い続けている子にも、不登校で自信をなくしている子にも読んでほしい」という。もちろん子供だけでなく、不登校を甘えやわがままだと思っている人、教育関係者にもぜひ読んでほしい。
昨年の8月が終わる頃、くるみちゃんからフェイスブックでのシェアを依頼するメールがきた。
「毎年2学期に、いじめや不登校を理由にした自殺が増えることを止めたい思いで、動画を緊急配信しました。『学校のことを考えるのがつらいひとへ2014』http://youtu.be/_M3RFKaamsE」
このメールで、新学期が始まる前に死を考える子供たちがいるという現実も知った。「登校するか、死ぬか」の二者択一ではないということを伝えたい。生きていれば楽しいこともある。
そう。楽しいというシンプルな感覚は大事だと思う。学びは本来楽しいもののはず。自分の人生を自分らしく豊かに充実させるために学ぶのだから。くるみちゃんは東京シューレで、「学校でやっていた勉強だけが学びじゃないんだと実感できた」という。
不登校になる子供たちは既存のレールに乗ることができず、「どう生きるのか」を思考し続けている、感受性の豊かな子供たちだ。そんな子供たちから発信を受け取っていると、大人社会の歪みこそが、学校を「楽しくない場所」にしているのではないかとも感じる。
活動を続けていると心が折れそうになるときもあるだろう。が、彼女の芯がポキッと折れることはないはずだ。思考することで培われた、しなるように柔軟な芯を持っているから。(女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/SANKEI EXPRESS)