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売り上げを福島の子どもたちに ラビラビ 「Song of the Earth リリースプロジェクト」

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売り上げを福島の子どもたちに ラビラビ 「Song of the Earth リリースプロジェクト」

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「Song_of_the_Earth_リリースプロジェクト」のレコーディング風景=2015年1月5日(提供写真)  現在、あるプロジェクトが進行している。地震によって生まれた唄を寄付によって経費をまかない製作し、売り上げを福島の子どもたちに届ける。「Song of the Earth リリースプロジェクト」と名付けられたこのプロジェクトを発案し、中心となって動いているのが、3人組ユニットのラビラビだ。

 ラビラビはふたりの打楽器と声(ボーカル)の楽団。年間100本を超えるライブを、多様な場所で行っている。フェスやライブハウスはもちろん、カフェや寺社までライブするフィールドは広い。音を届ける旅を続けている。

 2009年に中越地震でもっとも大きな震度を記録した新潟県川口町(現長岡市)で開催されたフェスで、ラビラビは地震のことを即興で歌った。「私は阪神大震災を大阪で体験しました。地震を体験したことによって共感できるものを、即興で歌えればいいやと思ったんです」とボーカルのazumiさん。

 そして11年3月11日。東日本大震災が起こった。ラビラビは、そのとき青森県八戸市にいた。その後、全国各地でライブをするたびに支援物資を集め、それを東北の被災地に届けていたという。復興支援を続けていくなかで、09年に即興で生まれた詩を「Song of the Earth」という唄として完成させたいという思いが強くなっていった。

 「仮設住宅でこの曲を歌うこともありました。被災地の方と私たちでは、抱えている悲しみの大きさは違う。その悲しみを私たちが引き受けるのではなくて、自分が震災で感じたことを素直に伝えることが大切なんだと。私たちにとっては、それが唄にすることなんです」

 一曲の唄となった「Song of the Earth」は、被災地の仮設住宅やフェスなどで歌われるようになった。

 「あるとき、お客さんがライブ映像を撮ってそれをYouTubeに上げてくれたんですね。それを見たミュージシャンの仲間が『自分のバンドでこの唄を歌っていい?』と手を挙げてくれたんです。唄が私たちから離れ、ひとり歩きしていく可能性があると思ったんです。この唄をもっと多くの人と共有したい。ラビラビの唄としてアルバムに入れるのではなく、共感してくれたみんなとリリースできたのなら、多くの人に伝わる可能性が大きくなる。作者不詳の広く口承される唄。そうなることによって、少しでも被災地に還元できたらいいなと思ったんです」

 わかる言葉で「残す」

 こうして「Song of the Earthプロジェクト」が動きはじめた。「Song of the Earth」という地震を体験して紡がれた唄を多くの人に伝えるための、未来につながるプロジェクトにほかならない。もしかしたら、09年に即興で生まれたときから、口承される使命を帯びた言葉だったのかもしれない。

 「今までも、震災のことを物語として人類は紡いできました。地名などにも知恵が残されていますよね。東日本大震災は、人類史上初めて、原発が事故を起こしてしまった地震です。それによって引き起こされた不安とか見えないものに対する恐怖とか、震災の傷を抱えながら生きていかなければならない。だとしたら、ここからはじまる物語があるはずなんです。私たちは音楽をやっているのだから、その思いを音楽で残したいと思ったんです」

 「地震という言葉に抵抗を感じる人も少なくないでしょう。心に痛く響く人もいる。水の山ができることをなんと表現すればいいのか。大地が揺れることをどういう言葉で表せばいいのか。誰もが明快にわかる言葉で残さないといけないと思ったんです。人間は忘れる生き物です。忘れないと苦しみを抱えきれない。けれど、震災は忘れてはならないことなんですよね」

 もうすぐ、東日本大震災から4年を迎える。人の記憶から東日本大震災のことは薄れていっている。忘れてはいけない体験を未来の人たちに唄で口承していく。「Song of the Earth」、地球の唄は3月11日にリリースされる。(フリーペーパー「Lj」編集長 菊地崇(たかし)/SANKEI EXPRESS

 ■きくち・たかし 1963年、岩手県生まれ。「スイッチ」「バランス」などのカルチャー雑誌の編集を担当し、現在はフリーペーパーLj編集長。年間、内外20近くのフェスに足を運ぶフェスの達人でもある。著書にアメリカのバンドPHISHを追いかけた『自由って何だ?』がある。

 ■ラビラビ 打楽器のNana(左)、Pico(中)とボーカルのazumi(右)による独創楽団。場と一体となり、抑揚と瞬発力にあふれた音を次々と繰り出す。国境、人種、時空を軽々と超えるサウンドは「縄文トランス」と呼ばれる。ライブは年間100本を超え、日本列島からアメリカ、カナダ、オーストラリア、タイ、韓国など世界を駆け巡っている。HP:www.rabirabi.com

 【ガイド】

“Song of the Earth” RELEASE PROJECT http://sotereleaseproject.com

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