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不快防ぐには自分がこうすればいい 「正しい恨みの晴らし方」著者 中野信子さん

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不快防ぐには自分がこうすればいい 「正しい恨みの晴らし方」著者 中野信子さん

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実はヘビメタ好きという中野信子さん。この日はゴシックロリータ風のいでたちで「ちょっとだけ素を出してみました」=2015年2月12日(塩塚夢撮影)  【本の話をしよう】

 「この恨み晴らさでおくべきか」…とはお化けの常套(じょうとう)文句だが、それほどまでに人の恨みは深いもの。人生を滅ぼしかねない一方で、うまく利用すれば大きな成果を残すモチベーションともなり得る。そんな妬みや嫉妬の正体を、気鋭の脳科学者、中野信子さん(39)が、旧知の仲という心理学者、澤田匡人(まさと)さんとタッグを組んだ新書『正しい恨みの晴らし方』で、解き明かしてくれた。

 暗黒面もさらけだす

 昨年刊行した『脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』がベストセラーに。美貌に加え、東大卒の医学博士、人口上位2%の知能指数の人だけが入れる交流団体「MENSA」の会員でもある。そう聞けば完全無欠のようだが、実は幼少期からコンプレックスに悩まされていたそうだ。

 「私は共感性がもともと欠如しているんですね。ずっとおかしな人と言われてきて、人付き合いが上手な人が妬ましかった。科学を志したのも、科学というメスで、自分自身のおかしいところに切り込んでいけるという可能性を感じたからでした」

 本書では、「ヒトの暗い面に魅了されてきた」とあとがきに記したように、自身の暗黒面もさらけだしている。

 「初期の著書はどこか優等生的だったけれど、今回はネガティブな面に光を当てることができて、とても満足しています。これまでの脳科学本は『いかに自分の脳を発展させていくか』に主眼が置かれていましたが、もはや現実逃避的、脳内お花畑的な本を書いてもしようがないと思うんです」

 「恨み」と向き合う

 本書で繰り返し語られているのは「妬みや嫉妬は、人間なら誰しもが持つ自然な感情である」ということ。「社会構造を壊すのでネガティブなものと思われていますが、本来『恨む』とは、自分に害になることを検知してイヤだなと思える能力があるということ。いわば『恨むだけのパワーを持っている』わけで、生物としては優秀です」

 タイトルこそ「恨みの晴らし方」だが、むしろ「恨みとの向き合い方」に焦点を当てている。

 「恨みにきちんと向き合うことが恨みを晴らすことにつながる、という提案です。誰かに恨みを持ったとき、相手をなんとかしたいと思い込むと相手基準で動いてしまう。それではいつまでたっても相手に振り回されて、本質的な意味での解決には至りません。自分の側に引き寄せて、『こういうことが不快だったから、それを防ぐためには自分がこうすればいい』と考えた方が、効率的です。相手を痛めつける方法ばかりに注力してしまうのは、ハイリスクローリターン。人生数十年しかないのだから、時間と労力がもったいないです」

 私は巫女なのかも

 インターネットのスラングやコミック、芸能ゴシップなど、身近な題材を例に取りながら、脳科学と心理学の両面から交互に論じる。

 「澤田先生と、『できるだけ新鮮にしたいね!』と話し合い、こういう構成にしました。澤田先生のパートを拝読しながら、『心理学ではこう見るんだ』と、私自身も新鮮な気持ちになれました」

 端的な解説で、今やメディアで引っ張りだこだ。

 「誰しもが『自分は何者か』という興味を抱いていて、それについて知りたがっている。かといって、盲目的に誰かを信じられるほど現代の人々は愚かではない。科学者のアドバンテージは、『こういう実験によって確かめられました』という、読者が追体験できる証拠を提示しながら謎を解き明かせることです。私の役割は、科学によって確かめられたことを、私の口を通じて、みなさんに分かりやすく届けること。古代には神の託宣を告げる巫女がいましたが、私はいわば現代版の巫女なのかもしれません」(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■なかの・のぶこ 脳科学者、医学博士。1975年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業後、東京大学大学院医系研究科博士課程修了。2008年から10年までフランス原子力庁サクレー研究所に勤務。13年から東日本国際大学客員教授、横浜市立大学客員准教授。さまざまなテレビ番組のコメンテーターとしても活動中。

「正しい恨みの晴らし方」(中野信子著/ポプラ社、780円+税)

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