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女神のように女性を飾る ROCHAS
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白い丸襟がアクセントの紺のワンピース(右、7万8000円)と白地に黒の模様をあしらったすっきりしたワンピース(左、20万5000円)。手前のバッグは春夏のテーマであるバラをあしらっている(24万円)=2015年2月9日、東京都中央区銀座(宮川浩和撮影)
ロシャス(ROCHAS)は、フランスの香水ブランドとして認知されているむきが多いだろう。もとは1925年にパリでマルセル・ロシャスが、女性を「女神(ミューズ)」とたたえるファッションを作りたいと創業、アパレルをメーンに成長してきた。一昨年、デザイナーにイタリアのアレッサンドロ・デラクアが就任してからは、繊細かつフェミニンなスタイルを続々と発表。今年は創業90周年の節目。日本でも百貨店でポップアップショップを展開するなど、攻めの姿勢に出る。
マルセル・ロシャスは、22歳でパリにクチュール・メゾンを立ち上げた。創業時は「熱狂の1920年代(ローリング・トゥエンティー)」に当たり、ハリウッドスターに憧れたロシャスは、女優たちのグラマラスな肢体を生かすよう、曲線を使ってウエストを細く絞った丈の長い「マーメイド・ドレス」やランジェリー「ゲピエール」を作り、大人気となる。
ジーン・ハーローやメイ・ウエスト、キャロル・ロンバードといった大物女優たちがこうした衣装を、映画でもプライベートでもこぞって着たという。
女性を飾るためにアクセサリーなど衣料以外の分野にも進出。その一環で36年に初の香水を発表する。フレグランスの別会社を設立。マルセルは当時、出会った3番目の妻、エレーヌをインスピレーションの源泉とし、妻への結婚プレゼントして44年に香水「ファム」を開発した。その後フレグランス部門は50年代にかけて大成功を収める。
ただ55年にマルセルが死去した以降は、ファッション部門がフレグランスの陰に隠れてしまう。80年代~2000年代にかけては消費財メーカーの独ウエラや、買収によってその親会社となった米プロクター&ギャンブル(P&G)の傘下にあり、03年にはファッション部門は閉鎖されてしまう。
再開は08年にオンワードホールディングス傘下の伊アパレル「OLG」と提携してから。それが本格化したのは13年にイタリアのアレッサンドロ・デラクアがクリエーティブ・デザイナーに就任してから。自身のブランド「ヌメロ・ヴェントゥーノ」なども持つ経験豊富なデラクアは、創業者マルセルの精神を現代に生かしたコレクションを発表している。15年の春夏は「バラ」と「ハミングバード」がテーマだ。
デラクアのデザインの特徴は衣料の軽さ。それまではオートクチュール性を重視する関係で、素材を二重の布仕立てとすることもあったが、薄く柔らかな仕立てのデザインが増えた。ジャカード織の透け感を生かした素材や、アコーディオン状のプリーツであるラッフルをあしらったスカートなど、軽やかな印象。上質な素材を使っているのは以前と同じだが、軽くなったため、よりデイリーに着られるようになったとか。
多くの衣料にポケットがあるのも特徴の一つ。機能性とスポーツテイストにラグジュアリー感をミックスした特徴が、襟やロゴにみられる。
現代でも多くのセレブリティーを顧客に持ち、近年ではラナ・デル・レイ、マドンナ、ニコール・キッドマン、ソフィア・コッポラにヨルダンのラーニア王妃まで。国内でもファッション誌などで存在を知った若手の有名女優から「着てみたい」といった声が寄せられているという。
20~50歳代まで幅広い層にファンが増えそうなロシャス。伊勢丹、三越、高島屋などの大手百貨店、ESTNATION、DESIGNWORKSなどのセレクトショップで取り扱いがある。現在は東京・日本橋の日本橋三越本店の本館3階でポップアップショップを展開中、3月3日まで。(文:藤沢志穂子/撮影:宮川浩和/SANKEI EXPRESS)
※価格は税別です。