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【まぜこぜエクスプレス】Vol.45 ろうの文化をもっと知ってほしい 手話番組 「GO!GO!しゅわーるど」

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.45 ろうの文化をもっと知ってほしい 手話番組 「GO!GO!しゅわーるど」

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「ゴー」「ゴー」「手話」「ワールド」を手話で表現。(左から)今井ミカさん、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる、モンキー高野さん、らーちゃん=2015年2月11日(小野寺宏友撮影)  ろう者(ろうの人)が作る、ろう者のためのネット番組がある。タイトルからして面白そうな『GO!GO!しゅわーるど』(shuwa.tv/?page_id=37)。日本初の手話総合バラエティー番組だ。番組に出演するモンキー高野さん、パートナーで手話通訳のらーちゃん、ディレクターの今井ミカさんに話を聞いた。 

 笑いのツボも違う

 モンキー高野さんは、皆からモンちゃんと呼ばれて慕われている。フットワークがとても軽く、私の活動にもヒョコッと顔を出してくれる。初めて会うことになった前日、「ずっと前から親しかったようにハグをしてもいい?」と、フェイスブックにメッセージが来た。そして翌日、目が合うなりギュッー!とハグ。せっかく覚えた私の手話の挨拶は空振りに終わった。実は、私たちが普段テレビや手話教室などで目にする「日本語対応手話(対応手話)」は、ろう者には伝わりにくいのだ。ろう者が使う言語は別のもので、「日本手話」と呼ばれている。

 モンちゃんは、お人形のようにかわいいらーちゃんといつも一緒だ。パートナー歴17年というらーちゃんの手話通訳は、素人でもわかるぐらいうまい。らーちゃんは「生活の中でろう者と会話しながら覚えるのが大切」と教えてくれた。モンちゃんは「手の動きだけでなく、顔の表情、動き、テンポ、すべてがあって日本手話」と言った。確かに彼女たちの手話での会話は相当に愉快だ。モンちゃんがおどける姿にも笑いっぱなしだった。テレビ番組などでみかける、かしこまった手話とは、ずいぶん印象が違う。

 『GO!GO!しゅわーるど』の台本、撮影、演出、編集を一人でこなす今井ミカさんも「一般の人がよく見ている対応手話を使った番組には違和感がある」と話す。「障がいを乗り越えて頑張ってるみたいな、ちょっと笑ってしまうような内容も多くて、ろう者が見ると共感できない」。ミカさんは番組を通して「ろう者たちの文化を知ってほしい」と思っている。けんかをするときは相手の手話を無視するためギューッと目をつむるとか、レストランで人を呼びたくてもなかなか気づいてもらえずオーバーアクションになるとか、ろう者ならではの「あるある話」が満載で、「笑いのツボが違う」という。

 日本手話がろう者の言語

 今回、聞いて驚いたのは、日本のろう学校で手話を使うことが厳しく禁止されていたという話だ。長い間「一般社会で生きていけるように」という考えのもと、相手の唇の動きを見て言葉を読み取り、無理やり声を出して話す「口語教育」が行われていた。現在40~50代以上の人たちは、机の下で隠れて手話を使い、バレるとたたかれたり廊下に立たされたりしていたという。「恐ろしい話だ」と思ったミカさんは、そんなエピソードからヒントを得て、『あだ名ゲーム』というホラー映画を作った。

 ろうの文化を無視した押し付けはそれだけではない。ろう者はあまり使わない対応手話や手先だけの手話がはびこっている。「聞こえる人が中心の手話サークルなんかで、ろう者も音楽を楽しんでほしいとか言って歌ってくれることがあるけど、だいたい無表情で、手だけじゃ何やってるかわかんない。頑張ってくれてるから、がまんして見るけど」と笑う。

 そんな状況を憂うミカさんは「番組を通じて、対応手話じゃなくて、ろう者の言語である日本手話を広げていくのも目標」と話す。「今はユーチューブだけの配信だけど、BSや地上波テレビでの放映も目指したい」。そんな、ミカさんが本当にやりたいことは映画監督。お気に入りの映画は小津安二郎作品。「ろう者の視点と似ているから、せりふがわからなくても映像に情報がたくさんあり、楽しめる」という。

 一方、モンちゃんは、ろう者にもっと人生を楽しんでほしいからと、モンちゃんと旅する「モンキツアー」を企画したい、ろうの文化を発表できるスペースをつくりたい、子供向けの講演で全国行脚もしたいと、したいことがいっぱい。「垣根をとっぱらって、みなが集える場所をつくりたい」と燃えている。

 すてきな話を教えてもらった。米国にあるマーサズ・ヴィンヤード島の話だ。遺伝により聞こえない人が多いこの島では、聞こえる人も聞こえない人もみなごくふつうに手話を使っているという。

 聞こえる人と聞こえない人がいて、それぞれニーズがある。少数派のニーズは伝わりにくく、不自由を感じているとしたら理不尽だ。他にも、見えない人、歩けない人、働けない人…。「少数派の声にもっと耳を傾けようよ」。そんなことを彼女たちは明るく表現している。(女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/撮影:フォトグラファー 小野寺宏友/SANKEI EXPRESS

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