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科学
春の咳と黄砂 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
春先に咳(せき)で起きてしまって寝られなくなったり、朝方に咳が止まらないという症状の方が来院されることがあります。息をする度にヒュウヒュウと音がして、横になると苦しいので少し頭を起こして過ごさなくてはいけないぐらい症状の重い方もいらっしゃいます。頭を起こしていないと呼吸できないことは「起坐呼吸」、呼吸するたびに笛のような音がすることは「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれる喘息の症状の一つです。
内服とともに、吸入薬で治療していきます。カチャッと回して、セットして口にくわえ、自分で吸い込む吸入薬をごらんになった方も多いでしょう。拙書「知らずに飲んでいた薬のなかみ」(祥伝社新書)で、吸入薬の美しい内部構造を紹介したこともありました。
これらの吸入薬の粒子は、直径が1マイクロメートルほどに調整されています。のどにあまり付着せず吸気の気流にのって肺に届けられる大きさが、これぐらいの大きさであるためです。スギ花粉は20マイクロメートルあり、黄砂は1マイクロメートルよりもずっと大きなものです。化石燃料を燃焼させて発生する煤煙(ばいえん)によるPM2.5粒子は、名前の通り数マイクロメートルの大きさです。花粉よりも、黄砂やPM2.5粒子の方が肺に到達する可能性が高いことがわかります。
砂漠でまき上げられた黄砂は中国の工業地帯や畑などの上を通過して日本に到達します。そのため黄砂の表面には、硫黄酸化物などの化学物質や細菌やカビ類、ウイルスなどが付着していることが明らかになってきています。
「大気汚染の短期的変動が気管支喘息の病態に及ぼす影響に関する研究」(島正之教授 兵庫医科大学公衆衛生学)によると、PM2.5が多く飛散すると喘息の発生が増加し、硫酸イオンがその鍵を握るとのこと。喘息は花粉症のアレルギー反応でも悪化しますので、黄砂の悪影響とあわさって相乗的に咳がひどくなることもあります。
喘息の治療は、気管支の炎症を抑えるステロイド吸入が基本となります。かつて喘息をわずらったことがある人は、症状がないことが続いていてもきっかけがあると再発して悪化することがよくあります。咳が続くときには医療機関を受診することにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)