ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
胃は食欲のコントロールセンター 大和田潔
更新
秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
3月9日付のコラムで空腹を楽しむ大切さについてお書きしました。血糖値の低下なども食欲を起こす要因です。もうひとつグレリンという物質も食欲の鍵を握っています。
心臓の病気を治す機関として有名な国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)は、最近では「かるしお」と呼ばれる減塩食を推進しています。レシピブックもベストセラーになりました。
ここには国立循環器病研究センター研究所(国循)という研究施設があり、人工心臓などの研究や生理学、ホルモンなどの基礎研究を行っています。
この研究施設で、児島将康教授(久留米大学分子生命科学研究所)と寒川賢治先生(国循理事)は、グレリンというペプチドを発見しました。ペプチドは、アミノ酸が少数連なった物質です。彼らは、ナトリウム利尿ペプチドという既に医療現場の検査項目になっているぐらい重要なペプチドも発見しています。
当時、世界中の研究者たちは、脳下垂体から成長ホルモンを分泌させる物質を必死に探していました。児島先生チームも他の研究者と同様に脳内を探していましたが、うまくいきませんでした。
いろいろな手掛かりをもとに、他の臓器を探してみることにしました。すると、なんと胃から成長ホルモンを分泌させる物質が大量に放出されていることに気が付き、それを精製して世界に先駆けて発表しました。成長ホルモン「growth hormone」を分泌させるもとになるものという点から、グレリン「ghre(=growth)+lin」と名付けられ、1999年に発表されました。グレリンは、頭の部分に大きな分子が結合している不思議な形であることも明らかにしました。
グレリンは成長ホルモンの分泌を促すだけではありませんでした。他のいろいろなペプチドホルモンと異なり、血液中に放出されるだけで脳のレセプターに結合して食欲を増加させることもわかりました。
胃から分泌されるホルモンが脳に働くというのは、とても興味深いシステムです。なんと胃は、単に食べ物を消化するだけではなく、エネルギー代謝に指示を出す指揮者でもあったのです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)