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【にほんのものづくり物語】桜守

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【にほんのものづくり物語】桜守

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日本屈指の桜の名所、弘前城の桜=2005年5月3日、青森県弘前市(提供写真)  ≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫

 そろそろ今年も桜前線が気になる季節。春の訪れを告げながら日本列島を北上する桜前線の予報に、心が浮きだす人も多いでしょう。

 万葉の昔より和歌や俳句に登場し、現代でも多くの音楽、文化作品のモチーフとして人気の高い桜は、日本を象徴する花として親しまれ愛されています。今回は日本の桜100選でも筆頭に挙げられる、弘前城の桜を見守る「桜守」-樹木医の橋場真紀子さんを青森県弘前市に訪ねました。

 「弘前さくらまつり」には毎年200万人を超える観桜(かんおう)客が訪れるといいます。天守、老松、岩木山との調和が美しい弘前城の桜は、1715年に藩士が京都から25本の桜の苗木を持ち帰り、植えたのが始まり。1882年にソメイヨシノ1000本が、1901~03年にかけてさらに1000本が植えられ、その後も市民による寄付などで現在52種、約2600本が植栽されています。中にはソメイヨシノでは日本最大幹周(537センチ)の珍しいものも。

 市民に愛され、日本中から観光客を集める桜の陰には、実は他所とは違う秘密が隠されていました。「桜切る馬鹿(ばか)、梅切らぬ馬鹿」という故事があるように、桜、特にソメイヨシノは病気に弱く切り口が腐りやすいため、切ってはいけないとされてきました。しかし弘前では、リンゴの栽培に欠かせない剪定(せんてい)の知識や技術を参考にし、短命であると考えられていたソメイヨシノを若返らせることができるようになりました。それが、1960年頃より継続されてきた弘前方式。生きた枝でも弱っているものは剪定し、若い枝を伸ばして花芽を多くするという桜の管理方法です。

 弘前市役所の「チーム桜守」は、まちの誇りである桜を守り、後世へとつなぐために発足しました。その一人が橋場さんです。地元に生まれ、子供の頃から弘前の桜に親しみ、桜とともに成長してきました。高校卒業後上京し美容関係の仕事に就いたのですが、一生の仕事を模索するために故郷へUターン。樹木医制度を知ったのも、その頃でした。「あんなに素晴らしい桜を咲かせる、弘前の樹木医に師事したい」と、25歳で樹木医を目指す決意をし、(財)弘前市公園緑地協会(当時)の作業員として植物園で働き始めます。実務経験を積みながら樹木医の資格を取得。2014年、市の公園緑地課職員に採用され、晴れて夢だった「桜守」に。

 協会時代から土壌改良や木々の剪定作業に同行し、「弘前方式」の管理方法の指導も受けてきた経験を生かし、日々園内の木々を見て回ります。小枝の剪定は通年。病気になった部分は直径20~30センチも切り落とすこともあるといいます。古い枝の手毬のような咲き方と、若い枝のブラシのようにたっぷりと花をつけるバランスを想像して入れるハサミ。それは翌年の花ぶりはもちろんのこと、10年後この樹がどんな花を見せてくれるのか創造することなのだそうです。故郷を思い、「市民の宝」大好きな桜を守り続けることに、ひたむきな情熱を注いでいる橋場さん。歴代の桜守の技術と情熱のたまものが、この地に見事な花を咲かせてきました。

 弘前の桜は花で楽しませるだけではありません。剪定された幹や枝は木工品に加工されたり、花芽のついた枝は週に1度、大切に花を咲かせてくれる市民のもとにもらわれていきます。腐って使うことのできない部分は木炭にし肥料へ。昨年からは「ふるさと納税」の御礼として剪定枝で作った箸も仲間入り。箸の加工で出る木クズ(チップ)からはワックスが抽出され、津軽こぎん刺しの香り袋として、さくらまつりの限定商品として販売されることになりました。

 弘前の桜には、故郷を愛し、生かし、広めていこうと願う知恵と思いが込められています。素晴らしい「桜守」たちのもと、これからもその美しさで多くの人々を魅了していくことでしょう。(SANKEI EXPRESS

 ■橋場真紀子(はしば・まきこ)さん 1973年生まれ。青森県大鰐町出身、弘前中央高校卒業後上京するが、一生の仕事を模索するためUターン。99年から(財)弘前市公園緑地協会(当時)で弘前城植物園内の樹木などの維持管理をしながら、2006年樹木医に。弘前城植物園のガイド、市民の園芸相談にのる「緑の相談員」等を努め、14年から弘前市公園緑地課主事。「チーム桜守」の一員として活動中。

 【ガイド】

 ■弘前公園のさくらの木の箸(非売品) <問い合わせ先>木村木品製作所 (電)0172・87・2747 www.kimumoku.jp/

 ■【弘前限定販売】香音 こぎん刺し「香袋」(2700円、税込み価格) <問い合わせ先>株式会社グランデュール (電)045・847・1683 www.grandeur-gd.co.jp/

 <問い合わせ先> 弘前市 公園緑地課 〒036-8356 所在地:青森県弘前市下白銀町1の1 (電)0172・33・8739

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