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衣食住のライフスタイル提案 伊勢丹新宿本店 リビングフロア&子供服フロア改装

 伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)が本館5階のリビングフロアと6階のベビー子供服フロアを改装、4日にオープンした。総工費40億円以上をかけた大がかりなもの。新宿本店は「世界最高のファッションミュージアム」を目指して2013年に婦人服、婦人雑貨フロアを改装。続く今回の改装で毎日の暮らしに必要な生活用品や子供や孫の育て方など、ライフスタイルもファッションとして提案、完成形に近づけるという。

 伊勢丹新宿本店の5階、リビングフロアに上がると、フィンランドのテキスタイルブランド、マリメッコの鮮やかなディスプレーが迎えてくれる。ゆったりしたライフスタイルを象徴する北欧テイストは、最近のトレンドだ。

 フロアは家具や文具など住まいや暮らしの核となるアイテムをそろえた「くつろぐ」、家族や友人と楽しい食事の時間を過ごす「つどう」、休息を満喫する寝具などをそろえた「やすらぐ」の3つのコーナーで構成。明るくて心地いい、人生を豊かにしてくれるヒントが詰まっている。

 大事なのは「アナログ感」

 「くつろぐ」のコーナーでは、人気デザイナーの皆川明さんによるカゴのディスプレーが目を引く。「上からつるす」インテリアとして家の空間演出をイメージしているという。まわりには皆川さんのブランド「ミナ ペルホネン」とコラボしたマルニ木工の家具が並ぶ。北欧風のパッチワークを施したイスはオープン2日で限定100点が完売した。

 家具では新たにイタリアの高級ブランド、巨匠アントニオ・チッテリオがデザインと総合監修をつとめるフレックスフォルム社製品の取り扱いを開始。国内百貨店初の常設店だ。革張りソファで数百万円と高額ながら、すでに問い合わせ多数。柔らかすぎず硬すぎない、絶妙の座り心地がある。

 趣味の時間を充実させる、こだわりの品では数十人の作家が競作した九谷焼のウルトラマンは、1体数千円から十数万円まで。マニア垂涎(すいぜん)の品だ。

 大事にしているのは「アナログ感」。インターネット社会の反動か、通常の用事はメールで済ませても、大事な人には手書きのグリーティングカードを贈りたいという人は多い。そうした要望に応えるカードも多数。また手漉(す)き和紙のオリジナル名刺も用意している。

 「やすらぐ」のコーナーでは休息の時間も大事と、寝具や枕をじっくり試せる個室が5部屋あるのが特徴だ。コンピューターで寝心地の角度を計測、自分にあった寝具を選べるサービスがある。

 6階のベビー子供服フロアは、「孫育てもライフスタイルの一つ」という考え方から。「大人が着る服のミニチュアを目指した」という本格的な子供服がそろい、改装前より売り上げが大幅にアップしたという。

 男性客取り込みも狙い

 百貨店の多くが、売れ行きの鈍いリビングフロアを縮小する傾向がある中、あえて逆を行く大改装の狙いは、ライフスタイルを提案することにある。近年はプレインピープルなど、衣食住を一緒に提案するファッションブランドの支持が広がっている。その流れから上質で心地よい暮らしを、百貨店の豊富な品ぞろえで実現していく狙いだ。

 三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長は「日本人の『衣食住』の中で、これまで『住』は一番あとだった。最近は雑貨やリビングなど、生活に占めるものにお金をかける割合が上がってきている。婦人服に来てくださるお客さまも取り込みたい」と話す。

 加えてこれまでは夫婦や家族で百貨店に来ても、ともすれば手持ち無沙汰に見えた男性客の取り込みも狙う。「リビングの中に『衣食』があってもいい」(大西社長)と話すように、5階にはワインテイスティングや、著名料理人によるデモンストレーションが随時、開かれるキッチンスタジオもある。滞在型の郊外ショッピングセンター(SC)を百貨店に持ち込んだ印象もあり、家族で1日ゆったり過ごせる新しいスポットとなりそうだ。(文:藤沢志穂子/撮影:川口良介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■伊勢丹新宿本店 東京都新宿区新宿3の14の1。(電)03・3352・1111。午前10時30分~午後8時。不定休。

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