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「春眠暁を覚えず」はご褒美に 大和田潔

 春うららかな日差しのもと、柔らかな布団の上でまどろむと、これ以上ないほどの至福な気持ちに包まれます。厳しかった冬の寒さも和らぎ、程よい暖かさが窓からこぼれると、いつまでも眠っていたくなります。家から出たくなくなり、仕事をしたり働きたくなくなっていきます。まさに、「春眠暁(しゅんみんあかつき)を覚えず」。

 このことわざは、孟浩然の詩『春暁』の「春眠暁を覚えず、処処啼鳥(しょしょていちょう)を聞く、夜来風雨の音、花落つること知る多少」からきています。「春の気候は気持ちよく、眠りこんでしまって夜明けもわからなかった。目を覚ますともう鳥のさえずりが聞こえる時間。昨晩は嵐の吹く音がしたかも。おそらく花がたくさん散ったにちがいない」という内容とのことです。

 たとえ夜中や夜明けに風の音が強かったとしても、眠り続けてしまい、目を覚ますとすっかり明るくなっていて鳥が元気に飛び回っているけれど、もっと寝ていたい。そういった気持ちは、良くわかります。忙しく働いている私たちにとって、たまに寝坊できる休日はなによりも楽しみです。

 けれども連日、寝る時間が遅くなって起床時間が会社に間に合うギリギリまで朝寝坊することはお勧めできません。人間の体は、覚醒と睡眠を繰り返しながら刻々と生命のリズムを刻んでいます。朝の日差しを浴びるとメラトニンの放出が止み、体温が上がってきます。午前中に頭脳が活性化し、昼ごはん。午後は、運動に適した時間となります。

 暗くなるとメラトニンが放出されて、睡眠に向かいます。夜にパソコンやゲームをして液晶のバックライトを見続けるのは、睡眠リズムからも避けるべきです。こういった一日のリズムを概日リズムあるいはサーカディアンリズムとよびます。

 早起きは頭脳を明晰(めいせき)にします。私は、必要な論文や文章を意図的にクリニックに行く前の早朝に作成しています。うららかな春の日差しを浴びて、ゆったりした音楽を流しながら柔らかな布団の上でのんびり眠ることは、たまにのご褒美にすることにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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