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心身ともに清潔である生活を 鈴木日宣

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心身ともに清潔である生活を 鈴木日宣

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日蓮宗系の尼僧、鈴木日宣(すずき・にっせん)さん=千葉県内(財満朝則撮影)  【尼さんの徒然説法】

 緩やかな風が吹くたび、はらはらと散りゆく桜の花びら。美しい風景ですがほんの少し寂しくもあります。そんな私の足元で「私もいるわよ」とスミレの花がささやくように揺れていました。華やかでなくとも咲く花にはそれぞれの美しさがあります。私たちも胸を張って「自分の花」を咲かせていきましょう。

 肌そのものを清める

 新年度を迎えるこの季節は、真新しい制服やスーツ姿が目につきます。まぶしいほどのその姿は清潔感にあふれ、見るからに清々(すがすが)しく感じられます。この清潔感は、対人関係において一番大事なものと言えましょう。流行の先端をいくファッションはとてもおしゃれ。しかし中には外見を飾ることのみにとらわれ、あまりお風呂にも入らず、何日も下着を取り換えない。また部屋はゴミだらけで掃除もしないという人がいるようです。そういう人はいくら外見を飾り立てても残念ながら清潔さが感じ取れません。

 身だしなみを大事にする人は行いや身なりを整え、他人に不快感を与えません。肌そのものを清め、清潔な下着や衣服を身に着け、部屋も清潔さが保たれていれば、身に着ける物や住む部屋がどんなに質素であろうとも、そのような人からは清潔さが感じられます。身だしなみが活(い)かされたおしゃれが一番望ましく思います。また仏教では「色心不二」といって「身と心は別々ではない」と説きます。身だけではなく心も浄(きよ)く保っていく努力も必要です。

 仏の教えを保つ人が貴い

 日蓮聖人の御遺文の中に「法妙なるが故に人貴(たっと)し、人貴きが故に所尊し」という一文がございます。「仏様の教えが貴い故にそれを保つ人間が貴く、その貴い人のいる場所も清らかで貴いのである」ということです。仏様の教えをよく守り、世の為(ため)人の為に生きる故に人は身も心も貴く、その人がいる場所も尊く清らかです。逆に人に迷惑をかけたり自己中心的な考えで生きる人は身も心も悪に染まっていき、その人のいる場所も不浄になるのです。

 「類は友を呼ぶ」と言いますが人ばかりではなく「霊」も集まってくるということを皆さんはご存じでしょうか。善霊は清潔さと善(よ)い匂い、そして善心を好み、悪霊は不潔さと悪臭、そして悪心を好みます。善霊は心身とも清浄な人に引かれ守護しますが、悪霊は心身とも不潔な人に引かれ祟(たた)り、災いを為(な)します。心身の清潔さを保つ習慣は「見えないもの」に対しても非常に大事なことなのです。

 モラルや節度を大事に

 お釈迦様は「正しい生活」を勧めています。それは家庭、学校、社会において身だしなみや心身共に清潔であることを始め、モラルや節度ある生活習慣を身につけることです。また学校の先生は「教える姿勢」、生徒は「学ぶ姿勢」という立ち位置を大事にする。社会人は仕事において真面目に取り組む努力と姿勢、そして仕事を教えていただいた諸先輩への感謝を持つ。学校でも会社でも上下の人間関係がうまくいけば「和」が保たれ、争いのない穏やかな環境となり、善人、善霊の集まりやすい社会が構築されることでしょう。

 正しい生活習慣・清潔・善心・和を心がけ、この季節にふさわしく、明るくフレッシュな環境を自らが作っていきましょう。

 ≪叱られて「悪」を知り、褒められて「善」を知る≫

 水が低きに流れるように、人は「悪」に流されやすいもの。仏様の教えの中に「~してはならない」ということが数多く見られるのは、放っておけば人間は「悪」を犯す割合が多くなるからと言えましょう。ことに濁世といわれる末法時代に生まれてくる人間の生命は汚れているため、悪を止めることは必須です。

 人間に限らずどんな動物でも育っていく過程において「してはならないこと」を教わります。寺院でも飼い犬が何度か出産したのを見てきましたが、子犬の離乳のあとしばらくしてから母犬の教育が始まります。自分のご飯に子犬が顔を突っ込んで食べても静かに見ていた母犬は、ある時点から「それは絶対にダメ」というように子犬がけがをしない程度にかみついたり威嚇して教えます。子犬は恐れおののきながら「してはいけないこと」を身を以て知るのです。

 現代社会において上司に叱られると「親に叱られたこともないのに」とかえって憤る人がいることを聞きました。幼い頃からの教育で人は叱られて「悪」を知り、褒められて「善」を知る。「彼(かれ)が為に悪を除くは、即(すなわ)ち是(これ)彼が親なり」という言葉がありますが「してはならないこと」を憎まれることを承知で叱るのは親の慈悲です。その経験こそ自分が成長し「叱り、褒める側」になったときに生かされる大事なものになるのではないでしょうか。(尼僧 鈴木日宣(にっせん)/SANKEI EXPRESS

 ■すずき・にっせん 1961(昭和36)年6月、東京都板橋区生まれ。音楽が好きで中学では吹奏楽部に入りクラリネットを担当。高校生の時、豊島区吹奏楽団に入団。音楽仲間とともに青春時代を過ごす。

 7年間社会人を経験したあと内田日正氏を師として26歳で出家。日蓮宗系の尼僧となる。現在は千葉県にある寺院に在住し、人間界と自然界の間に身をおきながら修行中。

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