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科学
春の日差しのもとで筋トレ 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
「筋肉トレーニング」(筋トレ)と聞くと、ボディービルダーが行う自分とは無縁の全く別な世界のもののような気がします。けれども、落としたコインをしゃがんで拾うこと、あるいはぬれた重い洗濯物を洗濯機から出してパンパンとはたいて干すこと、朝の通勤前に子供を自転車に乗せて疾走することは、間違いなく「筋トレ」です。
「筋トレ」には定義はありません。筋肉は動かせば、必ず何らかの反応を体は返してくれます。例えば、ミトコンドリア。筋肉細胞内のミトコンドリアは、糖を原料にしてATP(アデノ酸三リン酸)という、細胞がエネルギーとして使えるエネルギー源を作り出します。
ミトコンドリアは、内部の襞に整然と配置された酵素を持っています。糖が分解され、少しずつ酸化されていくエネルギーを無駄なく回収しATPを作っていきます。運動は、ミトコンドリアを増加させることが知られています。ウオーキングのような、きつい運動でなくても継続することに意味があります。
本コラムでも紹介したことがありますが、体温を作り出す特別な脂肪組織である褐色脂肪というものがあります。褐色脂肪は、ミトコンドリアで脱共役タンパクUCP-1経路という特殊な経路を使って脂肪を燃やします。運動とは関係なく脂肪を燃やして、体温をつくるための特種な経路です。運動は、体のシルエットを崩す通常の白色脂肪細胞を消費しやすい褐色脂肪細胞に変えてくれます。
筋トレは、軽い負荷で繰り返し行う方法と、重たい負荷で少数回行う方法の2つがあります。軽い負荷を繰り返し行う運動は、糖や脂肪を消費し筋肉に微細な「傷」を与えて強くする作用があります。やっと行えるような負荷をがんばって少数回行うと、筋肥大をもたらします。
筋肉を動かすとその周囲の脂肪を分解して、血液中への遊離脂肪酸の放出を促します。有酸素運動よりも、筋トレに時間を割き先行させたほうがダイエットに有効です。春の公園でスクワットや懸垂など自分の体重を負荷に利用した自重筋トレを行い、その後縄跳びやジョギングをして遊離脂肪酸を消費すると楽しく合理的です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)