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舌苔をキレイにしてがん予防 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
喉頭がんや咽頭がん、舌がんなどの口やのどのがんは、声を失ったり飲み込みが難しくなるなど、日常生活に大きな影響を及ぼします。岡山大学の森田学教授(医歯薬学総合研究科、予防歯科学分野)の研究グループは、「舌表面の汚れ(舌苔(ぜったい))の付着面積が大きい人は、呼気中のアセトアルデヒド濃度が高い」ことを報告しました。
舌苔の付着面積が大きいほど、口腔(こうこう)内のアセトアルデヒドが高く、口やのどのがんに影響を及ぼしているのではないかと結論づけています。アセトアルデヒドは飲酒後のアルコール分解産物の一つでもあり、発がんとの関係が示されています。
アルコールはアセトアルデヒドを経て最終的には水に分解されていきます。アルコールとアセトアルデヒドを分解できる能力は人によって異なります。どちらの分解も苦手な人が最もリスクが高いとされていますが、どのタイプの人も飲酒をしない人よりもがんのリスクは高まります。
舌苔によるアセトアルデヒド増加は飲酒や喫煙によるものではなく、舌に繁殖した細菌によるものです。もともと舌の表面の細胞表面は、糸状に伸びていてものをなめ取るのに都合がよくできています。また、細かな溝も存在します。
唾液による洗浄作用や免疫力、飲食物による物理的な表面の摩擦によって、舌苔は一定の量に保たれています。ところが体力が落ちてきて細菌が増加してきたり、鼻がつまって口呼吸になったり、口腔内が不潔になってくると、舌苔が増加してきます。
舌苔の細菌が増殖しすぎると、口腔内のタンパク質を分解して口臭の原因となります。柔らかな舌を傷つけないように、溝の多い舌でもきちんと磨けるように作られた「舌磨き専用ブラシ」もあります。ユニークな形をしています。
以前、歯周病菌が糖尿病や、足の血管の動脈硬化で起きる閉塞性動脈硬化症の原因になることをお書きしたことがあります(2012年6月)。舌苔によるアセトアルデヒドの発がん性の報告は、アルコールの発がん性にも改めて気づかせてくれるものでした。口腔内を清潔に保つことが、体全体の健康の鍵を握っています。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)