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英語で歌うバンド 増加中 HAPPY、The fin.、Suchmosに聞いた「なぜ」
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京都府綾部市で結成されたバンド、HAPPY=2015年2月21日(提供写真) 2014年の邦楽と洋楽のCD生産比率は81:19(日本レコード協会調べ)と広がるばかりだが、一方でかつてHi-STANDARDやELLEGARDENなどが英語詞でロックを歌って若者の間で一世風靡(ふうび)したように、海外ツアーも行う日本のエモ、ハードコア系バンドは今や全曲英語で歌っているケースが多い。THE BAWDIESのようにリズム&ブルース/ロックンロールのルーツを昇華させ、全曲を英語で歌うバンドもいる。日本語の性質上、ビートやグルーブを利かせた音楽には英語の方がノリやすいし、海外で活躍しやすいこともあるからだ。そして最近はHAPPYやThe fin.のように、ポップ/ロックシーンにもごく普通に英語で歌うバンドが増えつつある。小学生の頃からYouTubeで世界の音楽を自由に見られる環境で育ってきた、20代前半の彼らに話を聞いた。
「中学生で最初にオリジナルを作った時は日本語で作っていたけど、その後にRicが作った英語の曲を聴いて、“めちゃいいやん”って思ったんです。英語だからいいっていうんじゃなくて、曲としてカッコイイなと」(Alec)
HAPPYは京都府綾部市に住む幼なじみで結成。パンクやグランジなどを通過し、ドアーズに刺激を受けたことをきっかけに2012年に今の5人がそろった。Alecの父親はアメリカ人で、普段から聴いていた音楽は洋楽が多い。
「でも日常で話すのは日本語だし、曲を作る時には英語とか日本語とか意識していなくてメロディーに乗せやすかっただけ。歌を楽器の一部とする時にも英語はやりやすいなと思った」(Alec)
フットワークが軽く、結成翌年には10代で米国ツアーを行った。
The fin.も幼なじみで結成した神戸のバンド。最初はアジアン・カンフー・ジェネレーションのコピーバンドをしていたが、Yutoが作曲する上でサウンド的に気持ちのいいものを出していこうとしたら、英語の方が合うようになったと話す。20歳から英語も勉強し直した。
「日本語の時は、“作る”と意識する感じだったんですけど、英語で書くようになって、今は歌詞を書くことと自分のマインドが直結した感じ。もう6、7年は曲を作っているので経験値が上がったこともあるし、英語詞でストレートに自分の感情を書くようにはなったとは思います」(Yuto)
4人でロンドンとパリを旅行して映像を撮り、ミュージックビデオ(MV)を作成してYouTubeにアップ。レコーディングを含めDIY精神が強い。
「最初のEPの時は、僕の家で録ったものがインターネットを通して広いところへ出ていくことにロマンをすごく感じた。海外を狙って英語でやったというよりは、国境は意識していなくて、“人が作って人に聴いてもらうこと”を普通にピュアに地球上でやれたらいいなと思っています」(Yuto)
Suchmosは、横浜・茅ケ崎あたりの仲間で「何かやろう」と思って始めたのがバンドだった。YONCEが書いた曲はメロディーに合うものを優先し、レパートリーには英語詞も日本語詞もある。MVも仲間が撮影した。
「海外の曲の歌詞の和訳を読むと訳者によって解釈が全然違うことがあって、英語ってある意味不便だけど、ファジーさの良さもあると思う。ラフに受け取れるから、僕はそういう意味合いで無意識に言語を使い分けているかもしれない。日本語は書こうと思うと詳細に書けてしまうから、それをあまりいいことだとは思っていないんです」(YONCE)
「自分の場合は曲をスタジオに持っていく時には歌詞は書き上がっていて、どれも不満を歌にしているから、日本語で歌いにくい部分を英語にしていますね(笑)」(HSU)
HAPPYのRicが「日本語で良い曲ができたらやりたい、という気持ちはある」と話すように、彼らの主眼は“良い曲を作ること”。音楽面でさまざまな要素をミックスさせて挑戦しているように、さらに言語をどう乗せてインディーズシーンから発信していくのか、興味は増す。(音楽ジャーナリスト 伊藤なつみ/SANKEI EXPRESS)