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科学
「感受性」の大切さ 大和田潔
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秋葉原駅クリニック院長、大和田潔さん。診療と執筆で多忙な毎日だが、ランニングと水泳を欠かさない。「体が軽くなれば動くのが楽しくなる。運動をすれば気持ちも前向きになる」=2014年9月2日(塩塚夢撮影)
人間の体には違う原因や現象にもかかわらず、似たメカニズムを持つものがあります。「耐性」とか「抵抗性」と呼ばれるものです。人間の体の感受性は、薬効や代謝の面でとても重要です。
片頭痛を適切な治療薬を用いずに鎮痛剤だけで様子を見ていると、痛み止めを飲んでも完全には治まらない頭痛が連日起きてきます。そのため、切れ目なく鎮痛剤を内服しつづける状態になります。あまり聞こえの良い言葉ではないのですが、「薬物乱用性頭痛」とよばれる状態です。
市販の鎮痛剤には痛み止めの他に、カフェインや脳を鎮静させる薬剤が混ぜられていることがあります。こういった薬を連日内服し続けると、どんどん脳の薬剤への感受性が低下していきます。その結果、薬剤量が増えていってしまいます。
悪循環を断ち切るためには、適切な薬剤を用いる一方で、鎮痛剤の内服を中止する必要があります。塩分やアルコール、他の薬剤も同様に、感受性が低下するために増えていく可能性があります。
脂肪細胞から分泌される満腹感を脳に伝えるレプチンは、体重を一定に保つために大切な働きをしています。例えば、少し食事量が増えて、脂肪細胞が増えるとレプチンが増加し、食事量が低下し体重が元に戻ります。人間の脂肪量を一定に保っています。
ところが、肥満状態が続きレプチンが高い状態が続くと脳のレプチンへの感受性が低下することが知られています。レプチンの高値が続くと、「レプチン抵抗性」という状態になっていきます。レプチンが高くても、食欲が落ちにくくなり肥満が続く状態です。
レプチンが発見された当初、肥満の治療に使えるのではないかと考えられました。けれども使い続けると「レプチン抵抗性」が上昇し、効果が減弱してしまいヤセるための薬剤にすることはできませんでした。運動や食事制限により、体脂肪量を減らすことがレプチン分泌量を減らして、脳のレプチン感受性を再獲得することへの近道です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)