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【まぜこぜエクスプレス】Vol.51 好きなものがあれば世界は広がる 仲間をひき寄せるエンターテイナー 新倉壮朗さん
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タケオ君(右)と一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる。短い撮影の間にもさまざまな表情を見せて、みんなを笑顔にしてくれた=2015年4月18日(小野寺宏友さん撮影、提供写真) 28歳の新倉壮朗さん(タケオ君)はダウン症で生まれ、筋力が弱いため3歳まで歩くことができなかったという。ところが、11歳でアフリカの太鼓、サバールに出合い、毎日楽しく太鼓をたたき続けるうちに、筋肉隆々のガッシリとした体に…。サバールのほか、ジャンベやバラフォンといったアフリカの民族楽器、ピアノやマリンバの即興演奏、即興ダンスが得意で、ジャズミュージシャンの菊地成孔さんや作曲家でピアニストの野村誠さんら、さまざまなアーティストとコラボレーションも行っている。自由奔放で表現力豊かなタケオ君の魅力に迫った。
タケオ君のステージの展開は、まるで予測がつかない。セッションの相手が有名無名にかかわらず、タケオワールドをつくっていく。世界自閉症啓発デーの4月2日に開催したイベント「Warm Blue Day」の「MAZEKOZE Live」では、世界に名を知られるジャズピアニスト、松永貴志さんとタケオ君のマリンバでセッションをお願いした。松永さんのリードにタケオくんが絶妙のタイミングで入る。顔を見合わせ、うなずきながら笑顔の2人。初顔合わせとは思えないほど息がピッタリ。お客さんのノリも確認しながら演奏する。そうか。展開はお客さんの反応で変わるんだ。
歌うようにマリンバをたたき、肩でリズムを刻む。肩甲骨が笑っているようだ。お尻もキュッキュッとあがる。本当に楽しそうに演奏する。アンコールの声に踊り出し、客席にリフレインしろと合図を送る。ステージと客席のセッションがスタートする。タケオ君の「ありがとうございましたー!」のあいさつが終了の合図だ。
タケオ君の魅力にとりつかれて彼の写真を撮り続けている足立剛一さんは「以前は自分のためにたたく太鼓だったけど、この10年でどんどん変わってきた。お客さまを楽しませながら、自分も楽しんでいる」と話す。
4月に完成した、年に1回開催している定期コンサートの第8回から第13回までの映像を収めたDVD「新倉壮朗の世界」を見れば、タケオ君の成長の軌跡がわかる。楽器を演奏するだけではない。時にはユニークな言語で歌ったり、コミカルな即興劇をやってみたり、おちゃめなタケオ君のパフォーマンスに客席から笑い声があがる。タケオ君もお客さんの笑い声にニッコリ。そうかと思えば、現代音楽家さながらにアバンギャルドかつエモーショナルなピアノの即興演奏を披露する。驚くべきことに誰かに師事したわけではないという。
動画を撮影してYouTubeに投稿し、Facebookやブログでもタケオワールドを発信し続けているタケオ君のお母さん(タケオママ)は、「小さい頃から音楽が大好きで、ただ好きなことに打ち込んでいるだけ」と話す。
「ピアノの教室に通ったこともあったけど、タケオにとっては強制でしかなかった。楽譜はわからなくても、鍵盤のどこをたたけばどんな音が出るかは感覚で知っていて、その時の気分で音を紡ぎ出している」。音楽はタケオ君にとって言葉を話すように自然なものなのだ。
きっと、絵も歌うように描いているのだろう。のびのびとした線が物語っている。アート展「Warm Blue MAZEKOZE Art」に展示させてもらった作品も、「雰囲気がある」「おしゃれ」「ハイセンス」「かわいい」と大人気だった。
カメラを向けると人懐っこい笑顔を見せる。そうかと思うとシャッターに合わせてヘン顔をつくったり、ロッカー風に気取ってみたり…。サービス精神旺盛。根っからのエンターテイナーだ。
取材の日のタケオ君のブームは「わかんなーい」だったらしく、何を聞いても小首をかしげて「わかんなーい」。ステージでは見せない表情だ。かわいい。それが聞きたくていろいろ尋ねてみたくなる。そんなふうに一緒にいる時間がまた楽しい。
「セッションしてくださったアーティストが、また遊ぼうなって言ってくださいます。その時、その瞬間の心模様を音にして楽しんでいます」と、タケオママ。高校1年生の時から演奏活動をしてきたタケオ君には、プロアマ問わず一緒に演奏してきた音楽仲間がたくさんいるのだという。タケオママは「好きなものがあれば豊かに生きていける。仲間もできるし、友達も増えるし、世界がどんどん広がっていく」と話す。
「仕事以外のタケオの毎日は、音を出しているか、音楽を聴いてるか、絵を描いているか…なんです。あとは食べて、お風呂に入って寝る」と、タケオママは笑う。タケオ君にひかれて集まるアーティスト仲間たちが多い理由が、少しわかった気がした。(女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/SANKEI EXPRESS)