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経済
【にほんのものづくり物語】青森 りんご×プロテオグリカン
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白く可憐なりんごの花=2011年5月15日、青森県弘前市(提供写真) ≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
桜前線が通り過ぎると、岩木山の麓は白く可憐(かれん)なりんごの花で覆われます。青森県は日本海、太平洋に接し、鍵のような半島や山々など多彩な地形を持つ、山海の幸に恵まれた土地。観光地としての魅力はもちろんのこと、りんごなどの果実、農産物や海産物、その加工品などは全国各地へ届けられています。その一方で産業や雇用の低迷など多くの課題を抱えており、県をあげてさまざまな取り組みを続けています。
今回は、社会福祉の現場から障がい者雇用の実現へ向けて、産学官連携のプロジェクトとともに津軽ならではの地域活性を目指す、三浦和英さんを青森県弘前市に訪ねました。
全国屈指の生産量を誇る青森のりんごの約20%はジュースなどに加工されています。生産量の増加とともに、加工用りんごの残渣(搾りかす)の有効活用は県内でニュースに取り上げられるほど。年間1万4000トン、残渣の約70%が有料廃棄されていた状況を受け、2008年頃より青森県産業技術センターはこの有効活用に取り組んでいました。
そんな頃、社会福祉関係の仕事をしていた三浦さんのもとに、化粧品製造メーカーに勤める知人から、「全国の特産品で化粧品の原料になるようなものを探している」という電話がかかります。地域活性への思いや、母校弘前大学が産官学共同研究開発の中心的存在であることからインスピレーションを感じ、早速情報収集を始めたところ、県産業地域センター部長の話から、りんご残渣に含まれるセラミドなどの情報を知り、化粧品原料としての可能性を見い出します。
さらにもう一つの魅力的な原料、弘前大学が中心となり1980年から研究が始まっていた「プロテオグリカン」の存在が背中を押してくれました。人間の皮膚や軟骨の成分で、コラーゲンやヒアルロン酸とともに高い保湿性やアンチエイジング効果の期待できるこの成分は、廃棄されるサケの鼻骨(氷頭)から酢酸による安全かつ安価な抽出方法が確立され、2009年から医薬品や化粧品原料として使用できるようになっていたのです。生まれ変わる2つの素材「りんご果実エキス」×「プロテオグリカン」から新しい化粧品が誕生することになりました。
09年、三浦さんは、まだ県内にほとんどなかった化粧品メーカーを立ち上げることを決意します。青森県の豊富な素材を使って化粧品をプロデュースし、ハンディキャップを持つ方々の就労支援やQOL向上につなげていく「La Vie Precieuse=大切な命」ブランドです。ロゴは右半身に障害がある少女が2時間かけて墨文字で書き上げてくれたもの。雇用を生むために「売れるもの」を企画したいという思いから始めた事業でした。11年、青森県企業として初出展した「第70回かわさき起業家オーディション」で「かわさきビジネス・アイデアシーズ賞」を受賞。しかし、直後に東日本大震災が発生し、商品をPRするどころではなくなってしまいます。そこで考えたのは、弘前さくら祭りへの出展。食べ物屋台に混ざった「プロテオグリカン美容テント」は、初めは見向きもされませんでしたが、少しでも立ち止まってくれる人の手にテスターを塗り続けていたところ、わざわざ戻って購入する方が続出し、見事なデビューを飾りました。
その後、青森県の「産×学×官」が連携したプロテオグリカン活用プロジェクトとして高い評価を受け、11年の農林水産大臣賞を受賞。「イノベーションネットアワード2013」では、最高賞となる文部科学大臣賞の受賞を果たしました。現在は、弘前大学と共同で国内産甘草の栽培にも取り組んでおり、研究成果を積み重ね、将来、津軽産甘草由来成分配合商品を発表したいと考えています。
三浦さんの地元思考の原点は、大学時代の恩師の言葉「地球は丸いんだ。東京やニューヨークが中心ではない。今お前の立っている所から世界を見てみろ」。恩師だけでなく、友の声、スペシャリストの声に耳を傾け行動する柔軟性と強さが、希望を実現する未来を切り開いていくのでしょう。(SANKEI EXPRESS)
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