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動物園・水族館 交錯する「死活問題」 追い込み漁イルカ 購入継続ならWAZA除名

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動物園・水族館 交錯する「死活問題」 追い込み漁イルカ 購入継続ならWAZA除名

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和歌山県東牟婁郡太地町(ひがしむろぐんたいじちょう)で行われたイルカの追い込み漁=2014年9月(熊野新聞社提供)  日本動物園水族館協会(JAZA、東京)が国際組織から会員資格を停止された。国内の水族館が和歌山県太地町の追い込み漁で捕獲されたイルカの購入をやめなければ、最終的には除名となる。動物繁殖のための国際協力の枠組みから排除される懸念がある一方、中小の水族館にとってイルカが入手できないのは死活問題。JAZAは難しい判断を迫られている。

 過激団体の圧力

 「追い込み漁で捕獲したイルカの購入は倫理規定に反する」。世界の300以上の団体などが加盟する世界動物園水族館協会(WAZA)は、4月21日に本部のあるスイスで開いた理事会でJAZAの会員資格停止を全員一致で議決した。

 JAZAには動物園89、水族館63が加盟。イルカは繁殖が難しいため多くの水族館が太地町(たいじちょう)で捕獲した個体を購入しており、年間計約20頭が取引されるという。

 WAZAは会員に「残酷で無差別的な野生動物捕獲への関与」を禁じており、かねて追い込み漁で捕獲したイルカの購入を問題視。太地町の漁を隠し撮りしたドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」が米国で公開された2009年以降は、特に議論が活発になった。

 WAZAの要求を受け、太地町の漁協は食用と水族館用を分けて捕獲するようにしたほか、イルカに過度な負担をかけないように、より小さな船を使い自然に網に誘導する方法を採用。必要数を確保した後、残りを湾外に逃がす工夫も重ねてきた。JAZA関係者は「改善に取り組んできたのに、根本から駄目と言われても」と困惑する。

 今回の決定の背景には、過激な環境保護団体の圧力があったとの見方がある。反捕鯨団体シー・シェパードの創設者で、日本の調査捕鯨を妨害したとして国際指名手配されているポール・ワトソン容疑者のものとされる交流サイトには「長年の運動が実り、ついにWAZAが厳格な対応を決めた」と書き込まれた。

 繁殖計画にも影響

 動物園側は除名された場合の影響を懸念する。国内の動物園は野生動物の入手が世界的に困難になる中、WAZAを通じて繁殖目的の動物の貸し借りなどで国際的な協力を進めてきた。

 WAZAに単体で加盟している東京の上野動物園など全国7つの動物園・水族館は除名の心配はないが、このうちのある動物園関係者は「長期的に見れば国内の繁殖計画に影響があると考えるのは当然だ」と話す。

 水族館側の事情はさまざまだ。大手の新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)では、飼育するバンドウイルカ10頭のうち太地町からの入手は3頭で、7頭は繁殖。太地町との取引は20年近くなく「長期的な影響は未知数だが、太地町から調達できなくなってもすぐに困ることはない」という。

 しかし、ある東海地方の小規模水族館では、飼育するバンドウイルカ3頭すべてを太地町から入手。担当者は「ハード面でも大きな投資が必要な繁殖は民間の水族館では難しい。太地町に頼らざるを得ない」と話す。

 太地町からのイルカ入手をやめるか否かの回答期限は今月21日。JAZAは会員施設による投票で週明けにも判断を下すが、ある動物園関係者は「動物園と水族館が対立して、組織がバラバラになるのは避けたい」と複雑な胸中を明かした。(SANKEI EXPRESS

 ■水族館とイルカ 日本動物園水族館協会(JAZA)加盟の全国の水族館は、ショーや来場客との触れ合いなどを目的にバンドウイルカやカマイルカなど約10種類、約500頭を飼育(2012年末時点)。イルカは人気が高く、集客の上でも経営を支える重要な存在だ。中でもバンドウイルカは人懐こく好奇心が旺盛な性格とされ、客との触れ合いに重宝される。水族館は飼育するイルカが死んだ場合など、バンドウイルカの安定的な供給が可能な和歌山県太地町の追い込み漁に調達を頼ることが多い。

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