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社会
「夫婦別姓」認めるべきか(下) 事実婚選択「家族の絆、変わらない」
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事実婚による夫婦別姓を選択した水口尚亮さん(右)と橘昭子さんの夫婦=2014(平成26)年1月25日(本人提供)
夫婦別姓に対し、「家族の絆がなくなる」という理由で反対している人は少なくない。実際はどうなのだろうか。事実婚による夫婦別姓を選択し、運営するウェブサイト「夫婦別姓.com」で相談も受けている水口尚亮さんと橘昭子さんの夫婦に話を聞いた。
日本の民法750条では「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定められている。「夫または妻」という点では平等ではあるが、どちらかが生まれたときからの名前を捨てなければならないうえ、さまざまな手続きもしなければならず、結局は不平等が生じる。
水口さんと橘さんは、結婚するとなったとき、どちらの姓にするのかということで立ち止まった。
橘さんは一人娘であったことから、「橘」という姓を継ぐ人がいないことに抵抗があり、姓を変えなければならないことに違和感を持った。2人で話し合い、姓が変わることに対して男性であっても女性であっても躊躇(ちゅうちょ)するのは当たり前で、お互いさまだということになった。そして、2人にとって一番良いと考え出した結論が、事実婚による別姓だった。
「夫婦別姓にして、不便と思ったことやデメリットはさほどない。強いてあげるとするならば、子供のこと」と、水口さんは言う。2人には1歳(取材当時)の子供がいる。子供は「橘」姓であるため、水口さんが子供のことで病院との対応をした際、姓が違うため、微妙な反応をされ少し不便だと感じた程度だという。
橘さんも「姓を変えた場合に必要な事務的手続きから解放されるし、仕事を続けていく上では非常に楽。何より、自分の慣れ親しんでいる姓の橘のままでいられることがうれしい。今のところメリットの方が多い」と、きっぱりと言った。
別姓だと家族の絆や一体感が弱まるという意見に対しては、「もしも、私が橘から水口という姓になったとしても、今まで育ててくれた両親との絆が失われるわけがない。生まれた時から、お父さんが水口でお母さんが橘で、子供は橘。毎日一緒に生活しているのに、子供が『お父さんと姓が違うから、家族ではない気がする』と考えるでしょうか。決してそんなことはないと思う」と言い切った。
日本では、結婚するとほとんどの場合、妻が夫の姓に変えている。このため、夫婦別姓をめぐる議論は、女性の権利やジェンダー(性)の問題と切っても切れない関係にある。ジェンダー論や差別について研究している2人に話を聞いた。
≪関西大学社会学部 守如子准教授 「同姓も別姓も強制すべきではない」≫
「基本的に何事においても選択肢は多い方がいいと思います」。関西大学社会学部でジェンダーについて研究している守如子(もり・なおこ)准教授は、現在の日本の法律に異論を唱える。
守先生によると、夫婦同姓が強制されれば社会的に不利益を被る人々がいる。例えば、研究者にとってその評価を左右する論文は、結婚して姓が変わると過去に書いた論文と新しく書いた論文の筆者の名前も変わってしまい、不利益を被るという。
姓の届け出や登録の変更などの手続きのほか、仕事などで名前を覚え直してもらわなければならない、フェイスブックで検索できないなど煩わしいことばかり。「日本では現在9割以上の女性が結婚時に夫の姓に変えているが、そんな面倒さを女性ばかり我慢するのはおかしいのではないか」と、守先生は言う。
夫婦別姓に反対する人たちは「伝統を大切にしたい」「子供がかわいそうだ」と言う。これにも、守先生は「そもそも姓の伝統は明治以降のものであり、子供に関しても、法律が変わり周りに夫婦別姓の人が増えれば気にならなくなると思う。離婚が増えている今の日本において夫婦、家族は同じ姓でなければならないという固定観念のために何度も姓を変えさせられる子供の方がかわいそうではないでしょうか」と反論する。
「さまざまな立場、事情を抱えた人がいる現代で、夫婦同姓も別姓も強制すべきではない。法律はもっと柔軟であるべきだと思う」と、守先生は訴えた。
≪関西大学社会学部 石元清英教授 「仕組みから外れると不利益…おかしい」≫
「日本社会の制度では『個人』単位ではなく『家族』を重視する風潮があり、そこから外れるといろいろと損なことがある」。関西大学社会学部で現代社会における差別を専門としている石元清英教授は、こう指摘する。
「婚姻届を出している法律婚の夫婦は配偶者控除が受けられるが、夫婦別姓の事実婚夫婦にはその権利が認められていない。法律の仕組みから少し外れると、不利になるようになっている。『結婚』と『婚姻届を出す』ことがイコールで、それが当たり前。出さないと、理由を聞かれる。それはおかしな社会だ」と、石元先生は言う。
別姓の反対理由である家族の絆や子供の問題についても、石元先生は「実際に別姓を選択した夫婦はお互いのことを考え、話し合いを重ねているので仲が良い。子供も母親と父親の姓が違うことはしっかり理解することができるし、混乱することはない。絆がなくなったとしても、それは姓が違うからということではなく、初めからもろかっただけなのでは。世の中が考えるほど、夫婦別姓は何も特別なことではない」と語る。
「夫婦同姓が駄目なわけではない。同姓や別姓を強制するのではなく、選択の自由があるべきだ」と、石元先生は主張した。(今週のリポーター:関西大学社会学部 有志学生記者/SANKEI EXPRESS)
関西大学社会学部 有志学生記者
<取材・記事・写真>
王洪洪、金澤知美、沼田有紗、小崎藍、林芽生