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韓国の伝統的家庭料理をたっぷりと 芝蘭
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前菜のクジョルパン。宮廷料理の流儀にのっとり色彩も豊かだ=2015年5月19日、京都市北区(志儀駒貴撮影)
韓国に伝わる家庭料理と焼き肉のレストラン、芝蘭(ちらん)は、日本人の口に合うように味覚を調整し、バラエティーに富むメニュー数々の美味が楽しめる。色彩豊かな前菜やちょっぴり刺激的なピリ辛料理、タレに定評のある焼き肉…と、コリアングルメが勢ぞろい。代表者の石敬戌(セキ・ケイイ)さんのうんちくに耳を傾ければ、きっと韓国通にもなれる。
芝蘭は茶の湯文化に縁の深い臨済宗の寺院、大徳寺の近くに位置する。
前菜として登場するのは「クジョルパン」。八角形の大きな器の真ん中には小麦粉でつくった薄い皮(厚さ約1ミリ)が重ねられ、周囲に小エビ、干しシイタケ、タケノコ、錦糸卵、キュウリ、細切りの牛肉など8種類の具材が並ぶ。彩り豊かだが「白、黄、緑、赤、黒の5色を使うのが韓国宮廷料理の流儀です」(石さん)。薄皮を手に取り複数の具材を載せて包み込み、一口で頬張るとそれぞれの持ち味が混然一体に混ざり合う。
「ジョンの盛り合わせ」とは「卵につけて焼いた、いわば“ピカタ”のような料理」(石さん)だ。皿にはエビ、ホタテ、白身魚や、輸入したという韓国カボチャが盛られ、その上にパセリが添えられている。いずれもほんのりと塩で味付けされ、まろやかな甘みも感じさせる優しい味覚だ。
「ポッサム」は浅漬けの白菜に分厚い豚のロース肉とキムチを包んでいただく料理。一気に口に含むとピリ辛味が舌を刺激してくれるが、その刺激はクセになりそうだ。
次は「トウモロコシのジョン」と「パジョン」。“ジョン”とは煎餅の「煎」と書き、焼くという意味だそうだが、韓国風の“お好み焼き”でもある。トウモロコシのジョンは、トウモロコシを米粉で焼いた料理で甘みがあり、おやつ感覚で楽しめる。パジョンはニラと万能ネギをモチ粉で焼き、外側はカリッと焦げめが付いているが中の食感はもっちりとして、歯応えに変化がある。
韓国に渡り半年間本場の料理を学んだという在日2世の石さんは「トウモロコシのジョンは韓国の山岳地方の料理、パジョンは韓国の代表的なおやきです。もともと韓国はゴマを使う食文化だったのですが、途中からトウガラシが入ってきました」と解説してくれる。
焼き肉はヘレや上ロースが人気で基本的には京都産の雌牛を提供する。お勧めの骨付き「ソウルカルビ」も違った味覚が楽しめる。焼き肉ファンには香辛料を混ぜ合わせて作った韓国しょうゆに近いオリジナルのタレが好評だ。
ダイコンが沈む「水キムチ」なる飲み物は、スープを味わう。韓国冷麺のスープのようでさっぱりとした清涼感を与えてくれる。
「参鶏湯」(サムゲタン)は若鶏にモチ米、ナツメ、クリ、ニンニク、高麗人参を詰め込んで約4時間炊いた逸品。あっさり味のスープは飲み干したくなるほどで、体が温まり元気が出る薬膳料理でもある。「韓国では土用の丑の日に食べる習わしがある」(石さん)そうだ。
珍しいメニューが「高麗人参の天ぷら」。美容と健康にいいとされる高麗人参だが、天ぷらの食感はまるでポテトのようで、塩をつけていただく。「体調の悪い常連客は高麗人参を生で注文する」そうだ。
韓国焼酎やマッコリのほか日本酒、ワインも取りそろえる。店内はカウンターとテーブル席で、焼き肉は目の前の炭火で焼く。
定評あるスープは、どじょう汁のほかテールスープ、ユッケジャンスープなどを冷凍状態で地方発送にも応じてくれる。石敬戌さんとおいの晶文(チョンムン)さんは「肩肘を張らず、落ち着いて家庭で食事ができるような店作りを目指したい」と抱負を語った。(文:巽尚之/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)