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科学
食うか、食われるか 大自然の真実 アニマルプラネット 今月は「野生の王国ウィーク」
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オスのヒョウにふりかかる、壮絶な成長物語。(C)2015_Discovery_Communications,LLC.
ラグーンの上空から、ワシが勢いよく舞い降りていく。水面に着く直前で、鋭いかぎ爪のついた足を体の前にぐっと突出し、その足を水中へ。間髪を入れず、ワシはそのまま羽ばたいて飛び立っていった。かぎ爪の中では、がっちりとつかまれた獲物が絶命している。ウミワシの見事な狩りだ。
こうした映像は動物番組の定石だが、6月に放送されるアニマルプラネットの特集「野生の王国ウィーク」(8日23時から。5夜連続で10番組を放送)は“定番の弱肉強食”の姿を、一段も二段も深掘りして私たちに見せてくれる。
たいていの人は、テレビなどでワシの狩りの瞬間を見たことはあるに違いない。しかし「捕食の瞬間:水中の生き物」では、ハイスピードカメラによって、肉眼でもこれまでのカメラでも決してとらえることのできなかった、狩りの決定的瞬間が切り取られている。
ハンターは素早さが身上だ。目にも留まらぬ速さで動くからこそ、獲物が逃げようとする前に捕えることができる。
水中に足を突っ込んだウミワシを真正面からじっくりと見ると、体の実に半分近くが水中に没しているにもかかわらず、羽ばたきだけで水上へと飛び立っていく。水面近くを泳ぐカニを水中から見上げる映像では、突如画面に現れたワシのかぎ爪がそのカニをつかんで消えていく。ここまで鮮明に狩りをとらえた映像はなかなかお目にかかれない。さらに番組では、神業のような動きを可能にしている体の仕組みも解説。どのような動きで狩りが行われているか、なぜそんな業が可能なのかがわかる。
また、浅瀬に魚を追い込むイルカや飛び立つ鳥をもジャンプして捕えるサーバルキャット、秒速6メートルものスピードで鎌を繰り出すシャコなどの珍しい狩りのシーンも満載だ。
一方、「野生の王国」といわれれば、群れで協力して狩りを行うライオンや夜闇にまぎれて獲物に忍び寄るヒョウの暮らしなどを追った番組をイメージする人が多いだろう。しかし、“よくある”大型ネコ科動物の生活を追った番組にとどまらないのが、動物専門チャンネルであるアニマルプラネットならではのドキュメンタリーだ。
「ヒョウ 孤高の戦い」では、独り立ちしたばかりの鈍くさい若いオスが、縄張りの主に無視されるほどのひ弱な時代を経て徐々にたくましく育ち、主と対等に決闘するところまでを追う。
若オスのおぼつかない狩りや振る舞いを丁寧に追っていて、見ているほうが彼に感情移入せずにはいられず、気づけば息をつめて展開を見守ってしまう。単なる動物の成長物語とは違う、深い味わいが楽しめる。(SANKEI EXPRESS)