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生き方編 言霊の難しさ
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「IKKO_心の格言200」(IKKO著/エムオン・エンタテインメント、1111円+税、提供写真)
気持ちを上手に伝えるって、難しいですよね。仕事を通じてたくさんの方とお会いしていますが、言葉の伝え方の大切さを痛感させられます。
ラジオやナレーションなど、話すお仕事をさせていただいていますが、実は私、声がずっとコンプレックスなんです。だからこそ、どうやったら思いをちゃんと伝えられるか、人一倍勉強しないといけないと思ってます。
ナレーションのお仕事で大事だと思うのは、「距離感」。手元にあるものをさす「これがね」と、遠くのものをさす「あれがね」では、アクセントをどこに置くか気をつけるだけで、ぐっと世界が広がり、聞いている方の想像力をかきたてることができます。
トークショーでは、「納得していただけること」を大切にしています。その場にいるすべてのお客さまの心に訴えかけるように、一言一言をゆっくり話します。言葉には母音がありますが、母音を大事に大切にしゃべると、言葉が去った後も母音が残り、とても印象的になります。昭和の上手な俳優さんは、そういうしゃべり方をされていたように思えます。
経営者としての話し方では、指導者としての話し方を頭に入れるようにしています。自分の主張や指示を正確に伝えなければなりませんから。もし誰かが間違ったことを言おうとしたら、「あなた、違うわよ。それはね」と、相手のせりふにあえて言葉をかぶせる。最初はきっぱりと強くかぶせますが、語尾は相手を納得させるように、ゆったりと。
話の聴き方も注意が必要ですね。スタッフには、表面で言っているのと、深層心理で思っていることが違う子がいます。それを見抜けないと、のちのち大きなトラブルになってしまいます。そういったひずみは、言葉には出なくても、必ず表情や物音などにあらわれます。大きな物音を立てながら作業をしている場合、不満があるのかしら…などとね。そういったサインを見逃さず、真実の心の声を聴くことが大事になってきます。
私が尊敬する女優さんの一人に、故・杉村春子さんがいらっしゃいます。私はプロ意識の高い女性に心ひかれてしまうのです。そういう意味でも、若い頃から杉村春子さんが大好きで、ドラマも全部見ていましたし、ラジオ番組も欠かさず聞いていました。あるとき、インタビュアーに「舞台で何度も同じお芝居をやって、飽きないのですか?」と聞かれた杉村さんは、こうおっしゃいました。「同じせりふでも、そのときの自分の感情は違うし、環境も違う。その違いを受けて、言葉を発するのです。飽きるわけがありません」。言葉の難しさをとらえた、名女優・杉村さんならではのご返答だと、心が震えたものです。
言葉というのは、一つの言葉が幾通りにもとらえられていく。だからこそ、それを発するときは気をつけなければなりません。私自身、若い頃は気を遣いすぎて、心にウソをついた話し方をしてしまっていました。
でも、あるとき気づいたのです。「このままでは、誰も私のよい所を見てくれなくなってしまう。いい所も悪い所も含め、ストレートに伝えよう」と。気をつかってオブラートにくるむのも時には必要ですが、自分の判断が間違っていないという確信があれば、勘違いされないようにストレートに伝えるのも大切なことなのかもしれません。それができる人こそが、“本物”なのではないかと思います。
言葉に愛を込めて IKKO(美容家 IKKO/SANKEI EXPRESS)