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【写真劇場】極薄の空間
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(大出一博さん撮影) 青と赤のアジサイに挟まれるようにして、顔をやや斜に構えて立っている和服の美女にうっとりしながら、日本の空間における奥行きについて考えてみた。
明らかに美女は2つのアジサイの間に位置している。しかし、不思議なことに、このアジサイの間にどのくらい距離があるのか、美女はその間のどの辺に立っているのかを判断する糸口がない。すなわちここでは、青のアジサイ、美女、赤のアジサイという紙のように薄いものが3つ重なりあって、世界が構成されている。前後関係があるのは疑いようがないのだが、奥行きがなくて、空間全体が極薄なのである。手前の白い花ビラが、薄いものの重層という印象をさらに強めて、圧倒的である。
ヨーロッパの絵画では、このような、極薄空間、薄いレイヤーが重なっただけのようなミルフィーユ空間が描かれることはまずなかった。
かの地では、絵画に登場する要素は、どれも豊かな陰影によって、重厚な立体感を与えられ、その彫刻的立体同士も、奥行きのはっきりした遠近法的空間の中に、前後の距離をしっかりとって、並べられるのである。そこはすべてが厚く、奥行きがある。
この日本的極薄空間は、日本の国土の狭さと関係があるというのが、僕の説である。薄いものを重ねていけば、実際に奥行きのない狭い場所にも、多くのものを詰め込んで、しかも息苦しくならないのである。狭い庭でも美女とアジサイは共存しえる。
狭い国土に、高密度で住むわれわれの知恵が、この極薄空間の美学を生んだのである。(エッセー:建築家 隈研吾(くま・けんご)/撮影:大出一博(おおいで・かずひろ)/SANKEI EXPRESS)
≪ユリの王国≫
ヤマユリ、ササユリ、オトメユリ(ヒメサユリ)、スカシユリ、カノコユリ、テッポウユリ、ヒメユリ-。世界には100種類近くのユリがあり、日本に自生するユリは15種類ほど。そのうち6、7種類が日本だけに分布する固有種だ。そんな日本のユリが持つ最大の特徴は、花の大きさや色、香りなど、ほかの地域には見られない鑑賞価値の高い種類が野山にずらりと自生していることにあるという。
だから、江戸時代末期から明治にかけて日本を訪れた欧米の博物学者やプラントハンターたちは、目の色を変えて日本のユリを探し回り、球根を本国に送った。明治時代から戦前までユリの球根は日本の有力な輸出品でもあった。欧米の愛好家にとって、日本は「ユリの王国」だったのだ。
ユリは栽培が案外難しく、品種改良によってゴージャスな種類が次々と生み出されたのはバイオテクノロジーが進んだ1970年代から。ユリの品種改良は日本国内ではあまり進まず、成果をあげたのは欧米の園芸家たちだった。
例えば、純白で大輪の花を咲かせ、結婚式やお祝いの花束でおなじみとなったカサブランカは、ヤマユリ、タモトユリといった日本の自生種を元にオランダで開発された。タモトユリは自生地の鹿児島・トカラ列島で戦後、高値が付いた球根が乱獲されて絶滅状態になり、いまでは一部の植物園や園芸家が継承している悲劇のユリだ。
初夏から夏にかけて、庭先や里山に咲き誇る何種類ものユリ。これほど華やいだ花々が自生する姿は、ほかの地域では見られない。日本列島の豊かさを物語る光景の一つだ。(EX編集長 佐野領/SANKEI EXPRESS)
着る人:秋山あかり、涼佳
ヘア:air
メーク:ワミレスコスメティックス
スタイリスト:ユキコ・グレン
衣裳:鈴乃屋 銀座店(電)03・3571・1500、鈴乃屋(電)03・5807・6683 www.suzunoya.com