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【Q&A】規制改革答申 かかりつけ薬局などで生活便利に

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【Q&A】規制改革答申 かかりつけ薬局などで生活便利に

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規制改革会議で、安倍晋三(しんぞう)首相(中央右)に提言書を手渡した議長の岡素之氏(中央左)=2015年6月16日午後、首相官邸(斎藤良雄撮影)  政府の規制改革会議が規制緩和策を盛り込んだ答申をまとめ、安倍晋三首相に提出しました。

 Q 規制改革会議とは何ですか

 A 経済を活性化し、暮らしを便利にするために、雇用や医療など幅広い分野で規制緩和策を議論する政府の会議です。住友商事の岡素之相談役が議長を務め、企業経営者や弁護士、大学教授などで構成しています。

 Q 答申とは

 A 具体的な緩和策をまとめた提言で、成長戦略などの政策に反映されます。分野別の作業部会で有識者のヒアリングを重ねて検討し、今年の答申は約180項目に及びました。政府は答申を踏まえた規制改革実施計画をつくり、今月末に閣議決定する予定です。その後、各省庁で実現に向けた制度設計や関連法の改正を進めます。

 Q 主な提言は

 A 患者の服薬情報を一元的に管理する「かかりつけ薬局」を普及させることを求めました。薬局で健康相談に対応するほか、薬の重複や飲み残しを防ぐことで、医療費の抑制も期待されます。新しい医薬品の処方期間を14日に制限しているのは、通院する患者の負担が大きいと指摘し、期間を延長する方向で見直すよう提案しました。

 Q 暮らし関連の政策はほかにもありますか

 A 現在、自家用車を使った旅客運送サービスでは、原則として貨物運送ができないことになっています。この規制を緩めて、過疎地では自家用車を使った買い物支援サービスがしやすくなるように検討します。例えば運転ができない高齢者を車に乗せてスーパーなどに同行し、買ったものを運ぶサービスが考えられます。

 Q それは便利になりそうですね

 A ほかにも理髪店と美容院を兼業できない規制も見直します。理容師と美容師の両方の資格を持つ人だけがいる店舗では兼業を認めます。

 Q 消費者にはいいことばかりなのですか

 A そうとは言い切れません。雇用分野では、労働者よりも企業側の思惑に沿った緩和策もあります。例えば、労働者が不当に解雇され、裁判で無効判決が出た場合に、職場復帰ではなく金銭の支払いで決着させる「解決金制度」の導入も要望しています。「労使紛争の長期化を防ぐため」としていますが、企業の人員整理などに都合良く使われる恐れもあります。

 Q 答申全体の特徴は

 A 意見が対立する項目や目新しい政策は乏しかったです。企業の利益になる緩和策だけではなく、暮らしの改善につながるような規制の見直しを進めるべきでしょう。

 ≪目玉政策乏しく手詰まり感≫

 規制改革会議の答申を受け取った安倍首相は「岩盤規制の改革を断行する」と繰り返し強調した。政権の成長戦略の成果としてアピールしたい考えだが、効果の高い改革案は枯渇気味で、手詰まり感も漂う。

 答申は、規制改革を安倍政権が進める成長戦略で「中核を成す」と位置付けた。国民の求めに対応した「多様な選択肢を提供できる環境を整備する」と訴えた。

 しかし、答申には安倍政権の懸案である地域経済の活性化や、低迷する消費底上げにつながる抜本的な政策は見当たらない。政府内からも「小手先の改革」との声すら聞こえる。国民の話題に上るようなテーマは少なく、会議での議論も低調なままだった。

 農協改革や労働時間規制の見直しを求めた昨年と比べると、目玉政策に乏しい内容にとどまり、小粒の印象は否めない。

 経済成長の実現には新たな産業の創出や先端的な技術革新を通じて雇用や投資の拡大を後押しすることが不可欠だ。規制改革では多くの項目をむやみに盛り込まず、企業だけでなく国民の利益を優先し的を絞った議論が必要となる。(SANKEI EXPRESS

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