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【15年度税制大綱決定】「お金持ち優遇」 軽減税率は先送り
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増税後、落ち込みが目立つマンション販売。2015年度の税制改正では、住宅や自動車購入を後押しする税制優遇も延長、拡充される=2014年7月23日、東京都江東区(本社チャーターヘリから、川口良介撮影) 2015年度税制改正大綱の暮らし関連の項目では、高齢者が若い世代に資産を移す動きを後押しするため、贈与税を課さない制度を充実させることが柱になる。消費税再増税が17年4月に延期されたため、住宅ローン減税も延長される。全体的に資産が多い人が優遇されている一方、所得が少ない人への配慮が乏しい内容となった。
祖父母や親が一定の目的で孫や子供にお金を贈った場合、贈与税を課さない制度は大幅に拡充された。教育資金を贈った場合、1500万円まで課税しない今の制度は18年度末まで延長される。住宅を買うお金を贈った場合の非課税枠も拡大し、16年10月から1年間は最大で3000万円になる。さらに結婚や出産、育児に充てるお金を贈ると1000万円まで非課税にする制度も始める。
株式などの少額投資非課税制度(NISA)でも、子供や孫の名義の口座で投資すると課税しない制度を新設する。
政府は、高齢者が蓄えたお金が若者世代に移ると結婚や出産に踏み切りやすくなり、消費も活発になると考えている。ただ、子や孫にまとまったお金を贈る余裕があるのは、一定の資産や収入がある高齢者に限られそうだ。今回の制度拡充は「お金持ち優遇」との批判もある。
4月の消費税率8%への増税後、落ち込みが目立つのはマンションや自動車などの高額品だ。再増税が延期されたこともあり、住宅や自動車の購入を後押しする税制優遇も延長、拡充される。
10年間で最大500万円を所得税から差し引ける住宅ローン減税の期限は、19年6月末まで1年半延長される。再増税前の駆け込み需要による混乱を抑える狙いもある。
軽自動車税では燃費が優れた車向けのエコカー減税が導入され、軽自動車人気の追い風になりそうだ。一方、再増税に伴い廃止される予定だった自動車取得税は存続することになった。
消費が回復するには企業の賃上げも必要になるため、給与を増やした企業の税負担を軽くする制度が拡充された。ただ、業績改善が遅れている中小企業などが制度を活用するのは難しそうだ。
インターネット経由で海外から日本に配信される音楽や電子書籍などは、15年10月から消費税が課される。価格の安さで高齢者などに根強い人気がある紙巻きたばこの「わかば」など6商品も増税される。
食料品などの消費税率を低く抑える「軽減税率制度」は、所得が少ない世帯の家計を支援するために導入が検討されているが、具体化は先送りされた。対象の商品をどう決めるかなど難しい問題が多いためだ。与党は来秋までに制度案を決めるとしているが、それまで低所得者の支援策も始まらないことになる。
専業主婦世帯の税負担を軽くする「配偶者控除」を見直す議論も結論は出なかった。酒税ではビール税を減税して発泡酒と「第三のビール」を増税する見直し案も来年に持ち越した。いずれも消費者が反発する可能性があり、時間をかけて議論される。
≪第3の矢実行を≫
≪子ども版NISA 非課税枠80万円≫
少額投資非課税制度(NISA)では、親や祖父母が子供、孫の名義の口座で投資する「子ども版」を創設する。2016年4月に投資ができるようになる。20歳以上が対象の通常の非課税枠も、16年1月に、現行の年100万円を120万円に拡充する予定だ。
子ども版の非課税枠は年80万円、名義人の対象年齢は0~19歳とした。高校を卒業する直前の1月に、資金を口座から引き出せるようになる。
NISAは、投資枠の範囲内での株式投資などで得た売却益や配当にかかる税金が、5年間ゼロになる。子ども版の創設には、高齢者から若年層への資産移転を促し、若年層の投資への関心を高める狙いがある。23年までの投資を対象にした時限措置となっており、今後は制度を恒久化するかどうかも焦点になる。(SANKEI EXPRESS)