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【まぜこぜエクスプレス】Vol.54 言葉にならない思い 作品に 義足のアーティスト 片山真理さん

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.54 言葉にならない思い 作品に 義足のアーティスト 片山真理さん

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強烈な存在感とオリジナリティーあふれる個性で人を引きつける片山真理さん(右)と一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる(tobojiさん撮影、撮影協力:青家本店、提供写真)  若い世代を対象とした公募展「群馬青年ビエンナーレ’05」でその才能を認められ、2012年には若手アーティストの登竜門として知られる「アートアワードトーキョー丸の内」でグランプリを獲得した片山真理さん。先天性骨形成不全症により義足を使用しており、デコレーションした義足やセルフポートレートを作品として発表し続けている。

 過去の自分に感謝

 真理さんの初の個展「you’re mine」にうかがったとき、セルフポートレート作品の前で足が動かなくなった。じわじわと迫り来るビームを放つようなオーラ。最果ての地にいるような孤高の美。写真の隅々まで、食い入るように見つめる。「ああ、足がないのか…」「あ、指が2本」と随分たって、あらかじめ知っていたことにことさら気づく。会場にいる彼女に声をかけていいものかどうか躊躇(ちゅうちょ)した。届かないところにたたずむ人のような気がして。

 ところが、「おこしくださってありがとうございます。うれしいです」とはにかむような笑顔。かわいい声。予想を裏切る親しみやすい人だ。だが、その声はかなり上の方から聞こえる。「ごめんなさい。私、結構大きいんです(笑)」

 義足の両足にハイヒール! もともと大柄な彼女の身長は、ハイヒールを履くと190センチを超えるという。私は「ずるくない?」と笑った。そして理解した。写真の彼女は、あくまでも“作品”なのだと。素のアーティスト真理さんは、作品の中の人とは別の人なのだと。

 真理さんは両足とも太い骨が欠損する先天性骨形成不全症で生まれ、幼いころはブーツのような補装具をつけていたが、「普通の靴が履きたい」と9歳で足を切断。「手術が終わったら、足がなくて義足がついてて、びっくりした」と振り返る。「私が欲しかったのは生身の血の通った足だった」。しかし、すぐに気持ちを切り替えリハビリに励み、半年程で退院した。真理さんは、「いまだにその頃の自分を超えられない」と言う。「あの時の自分が頑張ってくれたおかげで、今の自分が活動できる。ごめん。ありがとうって感じなんです」

 彼女の名刺の裏には、補装具をつけて立つ幼い頃の写真があった。「忘れちゃいけないという気持ちもありますね。そのために自分はもっとカッコよくならなくちゃって」

 自分に生まれてラッキー

 アートに心が向かった理由は、「いじめや失恋」と真理さんは話す。子供の頃からずっといじめを受け続け、「一生懸命に話してもどうせ伝わらないと、コミュニケーションに対して悲観的になっていた」。高校入学時には「絶対、友達をつくらない」と決意し、意思表示のため義足に絵を描き始め、眉毛をそり落とし、真緑に髪の毛を染めた。「芋虫が触覚を伸ばして、鳥に狙われないように威嚇する感じ」

 そんな彼女なりの表現が美術部の先生の目にとまり、「公募展に出してみたら」と勧められたのが「群馬青年ビエンナーレ’05」だった。真理さんは義足をテーマにした作品を製作し、アーティストとして活動するきっかけをつかむ。「ずっと頭の中にある言葉にできない思いを処理するのに精いっぱいで、その出口がアートだった」

 とがり続けていた真理さんだが、最近は少し変わってきたのだという。「自分の鎧(よろい)のためにつくっていたのが、自分を許すための作品に昇華してきた。美しいねって思ってくれるだけで十分」

 「人を受け付けない」というアピールも、ある種のコミュニケーションの方法だったのだと彼女は気づいた。いつも「私はここにいるよ」と言いたかったのだと。彼女の満たされない気持ちを埋めてくれていたのは、どんな時も味方でいてくれた家族や、活動を応援し続けてくれている周囲の大人たちの存在だった。彼女の母親は、「なかったら作ればいいじゃん」と補装具のためにお裁縫をし、眠りにつくまで彼女の話を聞いてくれた。「私は周りに恵まれているし、この身体に生まれてきたのもラッキーだった。それに、実はすごく人が好きだったんだなと思うようになってきた」

 そんなふうに考えられるようになったのは、パートナーの存在が大きいという。「自分の身体を愛せるようになったのは、今の彼氏と出会ってから。彼は2本指じゃないとダメというくらい、私の手のことが最高に好きらしいんです」とにっこりと笑う。

 最近の彼女はシンガー、女優としても活動の場を広げている。「3年前、義足でハイヒールを履きたいと調べてみると、こんなことも福祉ではNGなのかと驚いた。現状があまりにもひどいので、目立つ格好をして自分が出ていくことで、少しでも変わってくれたらいいなと思っています」

 唯一無二のオーラを放つ彼女がとってもカッコよくて、魅力的で、私も幼いころの真理ちゃんに「ありがとう」って言いたくなった。(一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/SANKEI EXPRESS

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