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【大人の時間】思い出「化粧直し」 温かな座り心地 村上椅子

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【大人の時間】思い出「化粧直し」 温かな座り心地 村上椅子

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1脚2万円前後の「Re:椅子」は古い椅子をよみがえらせたリメイク商品=2015年6月15日、京都市上京区(志儀駒貴撮影)  「イス、張り替えます」と控えめに小さな看板が掲げられているのが、椅子張り専門店の「村上椅子」。同志社大学の新町キャンパスのすぐ近くにある工房とショールームは、椅子の形がかたどられたかわいらしい建物が目印。大きな窓からはさんさんと光が入る。古い椅子を修理して張り替えられた椅子がお出迎えしてくれる。

 村上椅子は村上浩次さん(38)と村上有佳さん(37)の夫妻が営んでいる。椅子の張り替えを主としているが、そのノウハウを生かしたオリジナルの椅子は、絶妙な配色がポップな雰囲気で定評がある。

 「ソファの張り替えなどは値も張ることもあり、買った方が安いことも多々あります。それでも、家具にこだわりを持つ若い人が増えたこともあり、需要は増えています」とご主人の浩次さん。

 ウレタン、木枠も交換

 持ち込まれる椅子のほとんどは、祖母が使っていたものなど、思い出が詰まっているものが多いそうだ。

 張り替えはまずカウンセリングから始まる。数千種類に及ぶ小さな生地サンプルだけでは、できあがるイメージがつかめないという人がほとんどだそうで、家具や調度品の雰囲気、好きな色目などを顧客と丁寧に話し合う。

 座り心地やできあがりのイメージをつかむのに最適なのが2階のショールーム。オリジナルの椅子がずらりと並び、オーダーで発注することもできる。

 椅子の張り替えは布地の裁断と縫製だけにとどまらない。中に仕込まれている緩衝材のウレタンはもちろん、バネ類も交換、木枠も修理するという。大がかりなソファは値段は張るものの、ダイニングチェアの座面交換なら、1脚6000円ほどでできるそう。オーダーから納品まで、10日から2週間ほどかかるという。

 「椅子の中は外から見えないけれど、きちんとした仕事をしないと座り心地や椅子の寿命に関わってきます。脚が折れているなど強度に関わるものは外注の木工職人さんにお願いしていますが、簡単なものなら私たちで手直しします」と有佳さん。ウレタンといった座り心地の要となるクッション材には特にこだわり、最高級のものを使用する。

 包み込まれるように

 ちょうど取材で訪れたときに持ち込まれていたのは、ニューヨークで購入されたという大型のソファセット。1人がけソファは海外からの運搬中に木枠が折れたそうで、作り直すという。

 布とクッション部分もすべて取り除かれて木枠だけが残る状態。注文客が選んだのは落ち着いた深いブルーの毛足の長いベルベット生地。

 ベルベット生地はミシンがけの折、布地が滑って逃げる特徴があるそうだが、うまくかけるにも経験が問われる。座面の毛並みは前、背もたれは下に流れるようにすると、包み込まれるような座り心地になるそう。毛足の流れを読み取るのも職人の技ならではだ。

 ミシン3台使い分け

 ミシンは布地の厚さによって3台を使い分ける。手縫いをする針もバーベキューの串のような太いものから、大型魚の釣り針のようにフック状にしならせたものまで多彩。針を自作することも多いという。

 ショールームが見学できるのは木・金・土の週末のみ。京都観光に組み込んで椅子を発注する人も多いという。通路に並べられた椅子は古い椅子を再生させるプロジェクト「Re:椅子」。捨てられていく椅子を救いたい、という思いから始まったというが、時を経た椅子は素朴で懐かしい雰囲気。

 がたつきを直し、生地を張り替え、アレンジが施された椅子は、座り心地はもちろん、見ているだけで楽しくなる。(文:木村郁子/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS

 ■村上椅子 京都市上京区近衛殿北口町190、(電)075・451・3283、椅子の張り替えはダイニングチェアの座面なら1脚6000円から。布地によって価格が異なる。ショールームのオープンは木、金(午後1~6時)、土(午前11時~午後6時)。時間外は応相談。HP(www.murakami-isu.net

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