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心遣いと控えめ価格 気軽に本格フレンチ ア・プ・プレ
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フランス語で「だいたい、およそ」という意味を表す言葉「ア・プ・プレ」。そんな言葉を店名に冠したフレンチレストランが京都市営地下鉄烏丸線の五条駅近くにある「ア・プ・プレ」だ。マナーを気にせず、気軽にフレンチを楽しんでもらいたいという思いが込められている。車も入らない路地裏をまっすぐ進んだところにあるお店は、築100年以上という明治時代に建てられた町家を改築しており、京都らしいたたずまいを見せている。
4人がけのテーブルが4つに2人がけのテーブルが1つというこぢんまりとした店内は、そこかしこに年代物の家具が配され、美しい花が飾られている。町家の雰囲気ともしっくりなじみ、田舎の祖父母の家へと訪れたような気分にもさせてくれる。
東本願寺にほど近い細い路地が交差する一角で2007年9月にオープンして以来、若い女性を中心に高い人気を誇っているが、料理だけでなく、こうした店内の細やかな心遣いが若い女性客をひきつける。
「店のインテリアは主人がコーディネートしました。街中でお店をやるよりも、わざわざその店に出かけたくなるようなちょっと不便、でも広々としたところを探し、ここで店をオープンしたんです」と女性オーナーシェフの竹村瑞穂さん。
そのお店選びは5年間、フランスで修業した経験が生かされている。フランスは都心のお店のみならず、郊外に店を構える星つきレストランも多い。わざわざ出かけたくなるようなロケーションも味の一つと思えてくる。
さて、レトロムード漂う雰囲気の中で頂けるこだわりの料理は、ランチ、ディナーともコースのみを提供する。その一皿一皿は、女性らしい繊細な盛りつけが輝き、お皿の中にアート作品を見ている気持ちになる。
例えば前菜の「サーモンマリネとサラダのフィユテ」は、サクサクのパイの上にベビーリーフなどのグリーンサラダを囲むようにサーモンのマリネがぐるりと巻き付けられている。
そっとナイフを入れてみるとパイがさくっときれる。山羊のチーズにさっぱりとしたサラダ、脂ののったサーモンとの妙が舌を楽しませてくれる。
魚料理は「ヒゲソリダイとホタテのポワレ」。テーブルに運ばれてきたときには、香草バターソースの香りに食欲がかき立てられる。しっとりとしたホタテとタイの火入れは絶妙。魚介類の甘味が存分に味わえる。ゴボウやロマネスコ、エンドウ豆にトマトと彩りよく飾られている。
メーンは「丹波鹿のロティ」。鹿肉などのジビエは秋冬シーズンにしか食べられないものと思われているが、ア・プ・プレでは年間を通して提供しているという。薄ピンクに色づく鹿のロース肉に添えられたソースは、赤ワインを煮詰めてていねいに作られたマルシャン・ド・ヴァンルージュ。
お花のようにかたどられたエシャロットを練り込んだバターが、さっと肉の上でとろけていくさまが見てとれる。ナイフを入れて一口。臭みのない軟らかな鹿肉の味わいに思わず笑みがこぼれてしまう。
「私自身、がっつりと食べたいほうなので、一つ一つのポーションは大きめにしています。家ではあまりたくさんの種類が食べられない野菜も、1カットずつでもさまざまな種類を多くお皿に載せられるように工夫しているところがこだわりかな」と竹村さん。
昨年と今年のミシュランガイド関西版で、星は付かないまでもコストパフォーマンスが高い調査員お薦めのレストランである「ビブグルマン」に選ばれていることもあり、本格的なフレンチでありながら価格は控えめなのもうれしい。京町家の雰囲気の中でゆったりと味わうフレンチは、女性シェフならではの心遣いにあふれている。(文:木村郁子/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)