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上品で繊細、だし生きる懐石料理 水円
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お昼のコースで出される「鯛胡麻味噌丼」は名物料理の一つ。新鮮な鯛と胡麻味噌の相性が抜群=2015年3月5日、京都市東山区(志儀駒貴撮影)
観光客でにぎわう八坂神社(京都市東山区)の南にある京懐石の「水円(すいえん)」。敷地内には清水・音羽の滝の流れをくむという井戸があり、そこから湧き出る名水で引くだしを生かした料理を供している。オープンして3年目の新しい店だが、上品で繊細な料理の数々は多くの客を魅了し、その実力を世に知らしめている。
地下100メートルから湧き出る井戸の水を1口。「おいしい!」。思わず目が丸くなった。
「この水がだしのうま味を存分に引き出してくれます」と、「水円」料理長の藤井孝之輔さんが説明する。利尻昆布と枕崎産の本枯節(ほんかれぶし)で引いた一番だしの「ハマグリのお吸い物」をいただく。上品な味わいが五臓六腑に染みわたり、「あぁ、日本人でよかった」とつくづく思う。
ぷりぷりのハマグリとハマグリしんじょの吸い物は黒こしょうがふられており、ピリリとしたアクセントがまたいい。
春の定番料理、タケノコとわかめの「若竹煮(わかたけに)」は真昆布とマグロ節、ウルメ節、メジカ節の混合だしを使用。ほっこり軟らかいタケノコにだしが染み込んでいる。奇をてらわないシンプルな料理ゆえに、料理人の技量の高さがうかがえる。
藤井さんは、京の老舗料亭「高台寺和久傳」や「櫻川」での修業を経て、2012年の「水円」開業とともに料理長を任された。新店ながらも、その洗練された味で多くの顧客を引きつける。
お昼のご飯ものとして人気の高い「鯛胡麻味噌(ごまみそ)丼」は、注文を受けてから鯛を薄く引き、特製の胡麻味噌にさっと絡めるという。淡泊な白身と、香り高くきりっとした味わいの胡麻味噌は抜群の相性で、温かいご飯と一緒に口に入れると自然と笑みがこぼれる。開業当初からのメニューだそうで、水円の名物の一つにもなっている。
自家製のしば漬けも絶品。「お客さまのご希望が多く、先月からお土産として販売させていただいております」と店主の松本達哉さん。併設されている「おもたせ」の店で購入することができる。
そんな人気土産品の品ぞろえが豊かなのも水円の特徴だ。たとえば、俳優・里見浩太朗さんのお気に入りの品として紹介された「くるみ餅」(864円)は、香ばしく煎った胡桃(くるみ)をペーストにし三温糖で練り上げ、もっちりした食感が魅力。すっきりした甘さの黒蜜と砕いた胡桃をたっぷりかけていただく至福のデザートだ。
れんこんのでんぷんと和三盆を練り上げ、米粉をまぶして焼いた「焼れんこん」(1つ270円)は、もちもちっとした食感と和三盆のコクで上品な味わい。口の中でしゅわっと溶ける焼き菓子の「淡あわ」(1080円)は、おからとゆば(淡ゆば)と、そば(淡そば)の2種類。他にも「鯛の親子味噌茶漬け」(1296円)など種類も豊富にそろっており、京都土産に最適だ。
ため息が出る一流の味と、心温まるおもてなし。それでいて昼は2700円~、夜は6400円~とリーズナブルな価格設定なのもうれしい。「まずは気軽に京料理を楽しんでいただきたくて。気に入ってくだされば、また足を運んでいただけますから」と松本さん。客の要望により、昨夏から甘味処もスタートした。
このレベルの高さで、この使い勝手のよさ。評判が評判を呼び、足しげく通うひいき客が増えるのも当然だろう。(文:杉山みどり/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)
※価格はいずれも消費税・サービス料込み