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和の心 素材を生かすイタリアン 京都ネーゼ
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放し飼い鶏の卵の卵黄のみをふんだんに使われたカルボナーラ(2000円)。黄身が固まるか固まらないかの低温で仕上げられている=2015年2月2日、京都市中京区(甘利慈撮影)
予約の取れないイタリアンで知られる「京都ネーゼ」。京阪三条駅から歩いて数分という立地は、鴨川にも近く、観光客にも立ち寄りやすい好立地。ビルの一角にある店は、エレベーターを降りればすぐにオープンキッチンと大きなカウンター席がお目見え。ゆったりと腰掛けられる大きめの椅子に、居心地の良い木のテーブル。まるで友人宅にでも訪れたような気分にさせてくれる。
「日本料理が何より好きで、京都に住んだのもそれがきっかけでした」というオーナーシェフの森博史さん。そのためだろう。和と洋の融合を感じるメニューが随所に見られる。
例えば「山田農園のカルボナーラ」は、京都・大原にある山田農園で放し飼いで育てた鶏から生まれた無農薬・有精卵の黄身だけを5個も使っているという贅沢(ぜいたく)さ。
「和食で食べるなら絶対卵かけご飯なんですけどね。卵の味がダイレクトに伝わってきますよ」と笑う森シェフ。
テーブルに運ばれてきたカルボナーラを見て、目を見張った。パスタに絡まる黄身は黄金色につやつや輝く。横に添えられるのはたっぷりのパルミジャーノレジャーノ。黄身が固まる直前の50~60度の低温で仕上げられているという。
フォークにくるくる絡ませて一口いただく。ねっとりとした濃厚な卵黄の甘味とピリッとした黒コショウ、塩漬け豚のパンチェッタが口の中で躍る。奇をてらわないシンプルさ故に、素材の善しあしがダイレクトに伝わる。今まで食べていたカルボナーラの概念を覆されるかのようだ。
パスタの上にチーズを直接振りかけるのではなく、横に添えているのは、味を変えて2通りの楽しみ方をしてほしいからだそう。森シェフの出身が愛知県ということもあって、ウナギの蒲焼きをお茶漬けなど3通りの食べ方ができる「ひつまぶし」の作法に則っているのだとか。
また、前菜にあたる「淡海地鶏の内臓の軽いスモーク」も驚きの一品。運ばれてきたお皿の蓋をとるとオーク樽のチップの煙と香りが一面に漂う。
トサカ、シラギモ、サコツと、焼き鳥屋でしか目にしない部位は塩のみで味付け。チップでいぶすことで風味が増し、コリコリ、クニュクニュとした食感も楽しい。山椒を少しつけていただくと味わいが一気に和のテイストに。内臓料理はコラーゲンの塊なので、お肌の状態が気になる妙齢の女性にぴったり。食べた翌朝、お肌の状態をチェックしたくなりそう。
京都ネーゼのメニューには食材の生産者の名前がよく出ている。例えば今の季節のデザートなら「愛媛産鈴木さんのイチゴミニパフェ」。愛媛のイチゴ農家が育てた大粒のイチゴがトッピングされ、このイチゴから作ったアイスクリームがガラスの器からのぞく。さっぱりしたイチゴ本来の甘みと爽やかさが口の中に広がる。
シェフ自身が産地に直接赴き、目にかなった季節の食材を取り入れてメニューを組み立てる。季節感を大切にする姿勢はイタリアンにも日本の和食にも相通じるものがある。
「“2泊3日の京旅行で日本料理との合間に食べるイタリア料理”がコンセプト。そのため、地産地消で地元の食材を生かす調理法を採用するなど、シンプルかつ京のスローフードを提供するよう心がけています」と森シェフ。
カトラリーには舞妓さんでも食べやすいようにと、お箸を添えているのも心憎い演出だ。4人がけのテーブル席が2つにカウンター席が8席。こぢんまりした家庭的な雰囲気がただよい、大型モニターからは古き良き映画が流れる。しっとりとした大人の雰囲気が味わえるイタリアンだ。
※価格はすべて税込み。