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気軽に1ランク上のスペインバル ポキート
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「カキのアヒージョ」(800円)は旬のカキのジューシーで濃厚なクリーミーさが堪能できる=2014年12月9日、京都市中京区(志儀駒貴撮影)
最近は京都市内でもよく見かけるスペインバルだが、そのはしりといえるのが2005年7月にオープンした「ポキート」だ。スペインバルといえば、お手頃価格のスペイン料理を小皿で提供するスタイルが一般的だが、このお店はスペイン料理店とバルの中間といった雰囲気で、ひと皿あたりの料理の量も多く、価格も一般的なスペインバルよりやや高めだが、どの料理も一般的なバルより1ランク高級で、非常に質が高いスペイン料理を深夜まで気軽に楽しめると人気を集めている。
「そもそもスペインでバルというのは社交場であり、井戸端会議の場ですから、飲むだけでも良し、ガッチリ食べても良し、飲み歩きの2軒目、3軒目として利用していただいても良し。とにかく気軽に楽しんでいただけるお店をめざしています」
オーナーシェフの廣岡寿規氏(42)はお店のコンセプトについてこう話すが、確かにその言葉に偽りはない。京都市役所にほど近い京都市のど真ん中という絶好の立地に加え、営業時間は翌日の深夜1時まで。あらゆるニーズに対応できるお店なのは間違いない。
京都市出身の廣岡氏は、地元の仏教大学文学部の学生だった20歳の時、飲食店の経営者に憧れ「多少、料理の知識もなければ」と思い、まずは京都市の知人のお店に勤務。その後、欧州各国を巡り、帰国。大阪のイタリア料理店に勤務するが、スペインに移住した高校時代の友人を訪ねた際、スペインバルと出会い、この形態を地元・京都に持ち込もうと決意。
再び京都のイタリア料理店に勤務し、接客から食材の使い方に至るまで、飲食店の運営ノウハウを学ぶとともにスペインにもたびたび出向き、2005年7月、ポキートをオープンした。
当時、関西でもほとんどなかったスペインバルとあって、多くのメディアに取り上げられた。11年12月には移転した隣の飲食店のスペースも獲得、お店の広さは当初の約2倍となった。
その店内。広さ約66平方メートルと京都では中規模で、カウンター12席を含む30席だが、女性好みのしゃれた雰囲気で、実際「主要顧客層は30~40歳で6割は女性」(廣岡氏)という。
そして料理の方も、一般的なスペインバルのものより味、盛りつけともに高級感がある。京都府の美山や和知の野菜を中心に塩とレモン風味のオリーブオイルで仕上げた「ポキートサラダ」は素材の新鮮さにイタリア料理の要素を導入。「カキのアヒージョ」も旬のカキのジューシーで濃厚なクリーミーさが口に広がる。
また、ピューレ状にした春菊と魚介の滋味深いだしを合わせた珍しい「魚貝と春菊のパスタ」は、春菊の青さとムール貝やエビとの相性が抜群。「季節感を演出するため、夏は春菊の代わりにズッキーニを使ったりしますね」と廣岡氏。
さらに「タラの白子のムニエル イカスミソース」は視覚的な美しさにもこだわった逸品。お皿の外周に書道のごとく描かれた紋甲イカのイカスミソースが印象的だが、当然ながらムニエルされた旬のタラの白子が味わい深い。本場・スペインでは魚の白子は食べないそうだが「京都でどう提供するかに重点を置いている」(廣岡氏)とのこと。
肉料理も豪華だ。「亀岡のイノシシのロースト、ゴルゴンゾーラのソース」は、京都・亀岡に住む知人の猟師から直接、仕入れた品質の良い肉を使っており食べ応えがある。デザートの「柿のティラミス」も、あんぽ柿をスペインのシェリー酒、ペドロヒメネスで煮込み、ペースト状にしてマスカルポーネチーズと合わせるなど、斬新かつ上品な味わいを追究している。
「スペインやイタリアの郷土料理というより、地元の食材にこだわった京都人に親しまれる料理を提供したい」と廣岡氏。「将来は、京都の食材を生かしたスペインバルを本場に逆輸入したいですね」と夢を語った。(文:岡田敏一/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)
※価格はすべて税込み。