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目の前で「仕上げる」独創フレンチ ル シェーヌ

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目の前で「仕上げる」独創フレンチ ル シェーヌ

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土壌の部分をパン粉とブラックオリーブで表現した「ラディッシュ(ハツカダイコン)のプランター仕立て」が目を引く「アミューズヴァリエ」=2015年2月6日、京都市東山区(志儀駒貴撮影)  【京都うまいものめぐり】

 ≪「オーベルジュ」支える≫

 明治の煙草王、村井吉兵衛(1864~1926年)の別邸として1909(明治42)年に建てられた「長楽館」。京都随一の花見の名所で知られる円山公園内に位置し、86年には京都市指定有形文化財に指定された明治の名建築としても名高いが、この建物の1階食堂の間がフレンチレストランの「ル シェーヌ」だ。2009年1月の開業以来、地元・京都と近江の新鮮野菜をふんだんに使った季節感あふれる独創的なメニューを、ライブ感覚重視のスタイルで提供することで知られる。春と秋の観光シーズンには舌の肥えた観光客でにぎわう名店だ。

 館内に足を踏み入れると、その豪華さに息を飲む。瀟洒(しょうしゃ)なシャンデリアや、細部にまで緻密な装飾を施した天井や壁面のレリーフなど、英国ヴィクトリア調のネオ・クラシック洋式(18~19世紀)に彩られた館内は、夢のようなひとときを演出してくれる。

 そんな館内はル シェーヌをはじめ「長楽館カフェ」、イタリア料理店の「リストランテ コーラル」、そして宿泊施設の「ホテル長楽館」(6室)で構成しているが、とりわけル シェーヌは大きな意味を持つ。

 泊まって、ゆったり

 なぜなら長楽館は、日本でも最近、知名度が高まっている「オーベルジュ」形式のサービスを提供しており、その中心がル シェーヌだからだ。

 オーベルジュとは、中世フランス発祥で、郊外や地方にある宿泊施設を備えたレストランのこと。長楽館ではル シェーヌの開業以降、ホテル宿泊者(1室2名利用時で1泊2食付、税・サ込み、1人3万6000円~)には日中、円山公園や八坂神社、清水寺といった祇園近辺を観光してもらい、夕食をル シェーヌで楽しんでもらおうという総合的なサービスを提供している。

 いわばオーベルジュの先駆け的存在なのだが、その重責を担うル シェーヌの料理は、宿泊者だけでなく、通の期待も裏切らない質の高い逸品ぞろい。早速、ディナーのメニューをご紹介いただいた。

 ライブ感重視サービス

 まずは日替わりでコースの最初に登場する「アミューズヴァリエ」。鮪のマリネや海老と蓮根のベニエ、そして、土壌の部分をパン粉とブラックオリーブで表現した「ラディッシュ(ハツカダイコン)のプランター仕立て」が目を引く端正な一品。

 そして前菜の「手長海老と3種のアスパラ 初卵の燻製」は、卵黄を固めず燻製にした近江産の初卵の香ばしい香りが食欲をそそる。「お客さまの目の前で煙を閉じ込めた器からお出しし、卵黄をソース代わりにして召し上がっていただきます。動きのあるサービスがうちの特徴です」と橋本和樹料理長(32)。

 続く「しっとり焼き上げた鰆とハマグリ 新緑の野菜とのマリアージュ」でも、ひときわ目を引くハマグリのだしを泡状にしたソースは、口に含むと潮の香りが広がりスッと消える。こちらも顧客が口に運んで初めて完成を見るライブ感重視のメニュー。

 パンの中から仔羊肉

 さらに「穀物肥育仔羊の塩パン包み焼き」は、まず塩パンの状態で顧客に供され、その後、絶妙の焼き加減の仔羊の肉がお皿に盛られて登場するという趣向。「お客さまの眼前で料理を仕上げる」(橋本料理長)ことにこだわり抜いた逸品といえる。デセール「イチゴとシャンパンのヴァシュラン仕立て」もさまざまな食感が楽しめるコースの締めにふさわしいひと品だ。

 京、近江の新鮮野菜

 大津市在住の橋本料理長は「食材の調理技法や、必要な知識の深さに魅せられ」フレンチの道に。「毎朝、近江や京都・大原といった地場の新鮮野菜を入手するため走り回っている」といい、休日も自分の畑でハーブの育成に務める努力家だが「古典的なフレンチの技法を駆使しながら自身の個性も出したい。当面は、地元の食通にもっとご来店してほしい」と抱負を語った。(文:岡田敏一/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS

 ■長楽館フランス料理 ル シェーヌ 京都市東山区祇園円山公園。(電)075・561・0001。営業時間はランチが午前11時30分~午後3時(LO午後2時)で、5000円と8000円の2コース。ディナーが午後5時30分~10時(LO午後8時)で、1万2000円、1万5000円、2万円の3コース。いずれも税込みで、サービス料は別。日曜営業。不定休。

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