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異国情緒漂う「秘密基地」で酒盛り 吉田屋料理店
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≪路地奥の小さな古民家≫
京都御所のすぐ南にある吉田屋料理店。路地奥の見過ごしてしまいそうな古民家を使ったお店では、現代とは違った速度でゆったり時が流れている。レトロな扉をガラガラと開けると、女将の吉田裕子さんが花のような明るい笑顔で出迎えてくれる。人に教えたいような内緒にしておきたいような、秘密基地を見つけたような気分。そんな居心地のいい料理店には、友人宅に集い「酒盛り」を楽しめるような、おいしいごはんとお酒がある。
「旅先で出合った料理を日本人の口に合うよう、家庭で買えるような食材で作るのがコンセプト。日本で再現しようとすると同じ食材は手に入らないことが多いですが、何に置き換えたらさらにおいしくなるかと頭をひねり、レシピを考えるんです」と吉田さん。
吉田さんの言う通り、異国情緒を感じながらも、ちょっと他にはない味が楽しめる。
例えばベトナム料理で有名な生春巻き。本来はエビや春雨などを巻くのが定番だが、ここでは「穴子のフリット 生春巻き仕立て」に変わる。大きなサニーレタスの上にはライスペーパーと大胆に半分に切られた大ぶりな穴子のフリット。香ばしい揚げ物の匂いに鼻がひくつく。
スイートチリソースにナンプラーとみじん切りのラッキョウで作ったソースをたっぷり乗せる。手早く巻いて大きな口を開けてがぶりとかじりつく。サニーレタスとキュウリのシャクっとした食感に穴子の軟らかさと甘酸っぱ辛いソースが絡みさっぱりと食べ進められる。
同じくエスニック気分を味わうなら「鴨のくん製と水菜のオリエンタルサラダ」だろうか。鴨の薫製はフランス産の鴨を使用。丁寧に下処理した鴨をチップでいぶす自家製とあって、スモークの芳醇(ほうじゅん)な香りが口いっぱいに広がる。添えられた小ぶりのエビせんべいと水菜を乗せていただくと、パリッシャキッの歯応えも楽しい一品。
「京の鴨鍋には水菜がお供でしょう。火を通した水菜とは違って生で食べるとほろ苦さと食感が楽しい。エビせんべいは中国のものだから、タイ料理のと違ってちょっと小ぶりなんですよ」と表情豊かに話してくれる吉田さん。
メニューに上る創作料理の数々は「お酒に合う料理」という。吉田さん自身がお酒好きということもあり、ワインの種類も豊富だ。
吉田さん自身の経歴も異色だ。京都市立芸大大学院を経て、ジュエリーデザイナーとして活躍。大学時代から友人宅でホームパーティーを開いたり、自宅に人を招いたりして料理をふるまっていたが、あるとき、美術館のパーティーのケータリングを依頼されたことが料理人になるきっかけとなった。
「数珠つなぎのように次々とケータリングをお願いされて。お寺や美術館、いろんな場所でさまざまな国の料理を勉強し腕をふるいました。ただ、料理の原点はやはり家庭。両親が共働きだったこともあり、おのずと料理するようになりました」
戦前生まれにもかかわらず台所に立つことをいとわなかった、というお父様からレシピを受け継いだのが「みょうがごはん」。あられ状に切ったミョウガとナス、キュウリにしょうゆを混ぜ合わせるだけ、というシンプルな混ぜごはんだが、ミョウガの香りが鼻に抜けると、蒸し暑い京の夏も涼やかな気持ちになる。
料理を盛りつけるお皿やグラスも、吉田さんのお眼鏡にかなった作家もの。ちょっと他にはない味わいのある食器類は見ているだけで楽しくなる。そんな古民家を彩る明かりはほんのり温かく、女将の人柄を表しているかのようだ。(文:木村郁子/撮影:志儀駒貴/SANKEI EXPRESS)
※価格はすべて税抜きです。