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【まぜこぜエクスプレス】Vol.55 みんなに居心地のいい場所を 認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズ
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前列左から「グッド・エイジング・エールズ」代表の松中権(まつなか・ごん)さん、一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる、カフェチームの橋本美穂さん。後列左からホームチームの増崎孝弘さん、ステーションチームのらんらんさん、ワークチームの川村あさ子さん=2015年5月16日(tobojiさん撮影、撮影協力:カラフルステーション) 「LGBTと、いろんな人と、いっしょに」を合言葉に、誰もが自分らしく年を重ねていける場所づくりをめざす認定NPO法人「グッド・エイジング・エールズ」。さまざまなプロジェクトに取り組むメンバーに話を聞いた。
ここ数年、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)などのセクシュアル・マイノリティー(セクマイ)に関する動きがめまぐるしい。最近では渋谷区のパートナーシップ条例が話題となり、米連邦最高裁判所が「同性婚は合憲」と認めたニュースが世界中を駆けめぐった。とてもうれしいことだが、同性婚が認められただけで、すべてのLGBTが自分らしく生きていけるわけではない。まだまだ多くのハードルがあるなか、グッド・エイジング・エールズには30人を超えるメンバーがプロボノ(職業に就きそのノウハウを生かすボランティア)で参加。「ホーム」「ワーク」「カフェ」などのプロジェクトチームをつくり活動している。
代表の松中権(まつなか・ごん)さんは「自分らしく暮らせる老人ホームをつくることがひとつのゴール」と夢を語る。その第一歩としてホームチームでは、東京都杉並区阿佐谷にLGBTフレンドリーなシェアハウスを展開しているほか、「LGBTから始まる高齢期のなかま暮らし研究会」として人生の後半に差し掛かった先輩LGBTへのインタビューやワークショップなどを行っている。周囲の理解が得られない時代に青年期を過ごした70~80代では結婚している人が多いが、1990年代以降に当事者としてアイデンティティーを持ち、結婚せずに50~60代を迎える独居高齢LGBTが急増中だという。ホームチームの増崎孝弘さんは、「なかには結婚していなくても、さまざまな関係で家族的なモノをつくってきた人もいる。LGBTに限らず、今後おひとりさまが増える時代に、何かヒントがあるのではないか」と話す。
ワークチームは2012年に、多様性を経営に取り込むダイバーシティ・マネジメントの促進と定着を支援する任意団体「work with pride」を、日本IBM、国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチとともに立ち上げた。人事などのダイバーシティ担当者を対象に、当事者の体験談や先駆的な事例を紹介するイベントを開催。担当する川村あさ子さんは、「採用したLGBTの人が、居心地の悪さから外資系などに転職してしまうのは企業にとって損失。LGBTへの理解は人材流出防止につながり、オープンで働ければ能力をフルに発揮し生産性が向上するというメリットもある」と提案する。
ほかにも、社会人や就職活動中の学生の当事者を対象に、カミングアウトして働く人の話を聞くイベントも企画。「カミングアウトして働く人を知る機会が少ない。ロールモデルを示すことで、不安を解消したい」と、川村さん。
今回、取材を行ったのは東京都渋谷区神宮前の「カラフルステーション」。レストラン、ギャラリー、シェアオフィスを備えた心地よい空間だ。壁一面に飾られたスタイリッシュなモノクロ写真は、シンガポール出身の写真家、レスリー・キーが撮影したもの。多彩なLGBTのポートレートをさまざまなフォトグラファーが撮影し、広く公開することで理解啓発を進める 「OUT IN JAPAN」というプロジェクトだ。
担当のらんらんさんによると、「これをキッカケにカミングアウトできたという人もいる」という。「2020年までに1万人の撮影が目標。スポンサーを探しています」。ステーションチームでは、地元にオフィスをかまえるポット出版とフリーマガジン「神宮前2丁目新聞」を発行するなど、積極的に地域にコミットしている。「LGBTだけでなく、みんなにとって居心地いい空間を増やしていくこと」を目標としているからだ。
その試みの一つとして11年から神奈川県葉山町に夏季限定の「カラフルカフェ」をオープン。今年も4日からカフェと、さらに海の家「UMIGOYA」とのコラボがスタートした。担当する橋本美穂さんは、「最初、地元の人たちは戸惑っていた。でも一緒にお神輿(みこし)をかつがせてもらったりして交流していくことで、人として認めてもらえるようになり、変わってきた」と話す。
インタビューの途中でメンバー5人とも当事者だと知った。言われなければ分からない。LGBTと言っても多様で、カミングアウトしている人、いない人、家族のある人、ない人、さまざまなライフスタイルがある。セクシャリティーにしてもLGBTという枠にとどまらない多岐にわたる人がいるのだ。シンボルのレインボーカラーはそのグラデーションを表現している。
電通ダイバーシティ・ラボの調べでは13人に1人はセクマイ。これは、どの学校のクラスにも、どの企業にも必ずセクマイの人がいるということ。その人たちが働きづらくないか、生きづらさを感じていないかと考えなければならないということ。セクマイが暮らしやすい社会は、誰もが暮らしやすい社会。レインボーカラーはセクマイにとどまらず、広く多様性も示す色に見える。(一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/撮影:フォトグラファー toboji/撮影協力:カラフルステーション/SANKEI EXPRESS)