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【安倍政権考】育たぬ「骨太」の保守系若手議員
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衆院平和安全法制特別委員会で、百田尚樹(ひゃくた・なおき)氏が出席した文化芸術懇話会に関する質問に答える安倍晋三(しんぞう)首相=2015年6月26日午後、衆院第1委員室(斎藤良雄撮影) 「報道の自由、言論の自由を軽視する発言、あるいは沖縄県民の思いに寄り添って負担軽減・沖縄振興に力を尽くしてきたこれまでのわが党の努力を無にするかのごとき発言が行われたと認識している」
7月3日の衆院平和安全法制特別委員会で、自民党総裁でもある安倍晋三首相(60)はこう答弁した。
6月25日に自民党本部で開かれた自民党の若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」で、報道機関に圧力をかける発言が出た問題についてである。
首相はこう続けた。「総裁として国民に心からおわびしたい。沖縄県民の気持ちも傷つけたとすれば申し訳ない」。
事の発端は、懇話会の初会合だった。37人の出席者のうち、一部議員が「(安全保障関連法案に批判的な)マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」と批判。講師に招いた作家の百田尚樹(ひゃくた・なおき)氏(59)は「沖縄の2つの新聞は潰さないといけない」と発言したのだ。
これらの発言が報じられると世論は猛反発した。自民党は事態を沈静化させるため、懇話会の代表を務める木原稔(きはら・みのる)青年局長(45)を1年間の役職停止に、問題発言をした3議員も厳重注意処分とした。懇話会は首相に近い議員によるものだったが、首相は谷垣禎一(さだかず)幹事長(70)と協議した上で、処分に同意した。
そもそもこの懇話会は初会合を開く前から大きな注目を集めていた。9月の自民党総裁選を前に安倍シンパの若手議員を多数集め、首相の無投票再選への機運を高めることを狙ったものとみられていたからだ。
党内では5月にリベラル系若手議員が、古賀誠(まこと)元幹事長(74)の支援も受けて勉強会「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」を立ち上げており、対決の図式にもなっていた。
一連の騒動を受け、懇話会は休止状態に追い込まれているが、会の立ち上げに加わった自民党関係者は「懇話会の真の狙いは、直近の総裁選をどうこうというよりも、保守の思想をきちんと理解した若手議員を増やすことにある」と明かす。
首相には当選回数の若い国会議員に“骨太”の保守系議員が育っていないとの思いがあり、懇話会はそういった首相の意向を反映して創設されたというのだ。
首相自身、若手議員のころから憲法改正や教科書問題などに熱心に取り組み、故中川昭一氏らとともに保守主義について勉強を重ねてきた。首相は地道な努力で賛同者を増やし、今では、こうした保守系議員が党内でも一定の勢力を誇るまでになった。
ただ、ここ数年の国政選挙で当選してきた若手議員たちは保守主義についてきちんと勉強をしたことがなく、保守の理論的な基盤ができていないケースが目立つ。「保守を標榜(ひょうぼう)しながら、単なる安倍応援団になっている」(ベテラン秘書)との指摘も少なくない。
中堅以上の保守系議員はリベラル系ともしっかりと論争ができるが、若手については、現状では討論会に出ても底の浅さが露呈しかねない。
小泉進次郎・内閣府政務官(34)のように一般国民にきちんと語りかけることができる若手のスターが、保守系議員に見当たらないのが目下の首相の悩みだ。その首相の危惧が、図らずも表面化してしまったのが今回の懇話会での報道圧力発言だった。
ただ、メンバーによると、懇話会の活動は今後も継続する方針だという。再び芸術家などを講師に招いて保守主義への理解を深めていくとのことだが、一連の騒動のほとぼりが冷めるにはもうしばらく時間がかかるだろう。(桑原雄尚/SANKEI EXPRESS)