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【花緑の「世界はまるで落語」】(40) 笑いと癒やしの稽古場で

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【花緑の「世界はまるで落語」】(40) 笑いと癒やしの稽古場で

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楽しい出演メンバー(柳家花緑さん提供)  8月6日から始まるお芝居「南の島に雪が降る」。おかげさまで私、花緑が初主演をさせていただく舞台。ただ今絶賛お稽古中であります。

 俳優・加東大介さんによる実際の戦争体験がベース。戦地ニューギニア島のマノクワリで演芸分隊が設立され芝居小屋が作られ、みんなでお芝居をしていたという話。オーディションをして人(劇団員)を集め、だんだんお芝居が作られていく過程がまるで、今回キャスティングされて舞台を作っていくわれわれ役者にも当てはまる。

 出演者ほぼ全員が初共演。この原稿を書いている時点で3週間目に突入したお稽古。私が演じる加東大介さんの妻役とオランダ人宣教師の娘の2役をやってくださる大和悠河さん。5月に行った制作発表のごあいさつで「このお芝居の癒やしになれればうれしいです!」。すでに稽古場では、みんな悠河様の美貌と存在に癒やされております! 特に私はせりふを交わすシーンが多いので、寄席という空間では有り得ない癒やしが私を包んでおります!

 真面目にやればやるほど

 そして、違う意味で癒やしを届けている俳優さんが1人おります。漆崎敬介(うるしざき・けいすけ)さん。映画や舞台で活躍している俳優さんです。とにかく役作りがすごい。

 今回、瀕死(ひんし)の兵隊役をやるために、体重をかなり落として舞台に臨んでいるその姿が、「まるでロバート・デニーロの役作りを思わせるようだ」と評判で、実際に稽古場で彼が演技をすると本当に目の前で命の灯火(ともしび)が終わりそうな感じにどよめきが起こるほど、リアルな瀕死ぶりに関心が湧き注目の存在に。そのリアルな演技を支える体は、身長152センチ体重44キロとたいへん小柄です。そんな彼が稽古場で笑いの渦を作っているんです。

 今回のお芝居は、売れっ子の俳優さんが多く、お稽古1週目から2週目なんかは全員そろわない。私も柄本時生くんと一緒にテレビに出演してお休みする日も。するとキャストの誰かがその穴を埋めるために代わりを演じるわけです。

 ある日、川崎麻世(まよ)さんがお稽古をお休みした日、漆崎さんが麻世さんの代わりをやりました。本職は歌手で戦地で歌を披露する役、しかも身長182センチの麻世さんの代わりです。シーンは演芸分隊に入部するための面接を受ける場面。「はい、次!」というと麻世さんではなくそこに現れたのは漆崎さん。昨日まで麻世さんが言っていたせりふを小柄な彼が言ってる。姿にギャップがありすぎて漆崎さんが真面目にやればやるほど、おかしくておかしくて稽古場は大爆笑!

 せっかくの誕生日に…

 その中で1人笑いが止まらないのが松村雄基(ゆうき)さん。もう笑い過ぎて涙が止まらない状態に。その後も酒井敏也さん、ワハハ本舗の佐藤正宏さんの代わりを務め、いずれも松村さんは撃沈。目の下びちょびちょになりながら笑っている始末。当人は笑わせようとしていないのにおかしいのがすごい。もう存在が面白い。

 そんな彼のキャラが浸透したある日。稽古場へ入るとホワイトボードに「今日は皆さんのマスコットキャラクター漆崎さんの誕生日ですよ!」と書かれていたのです。おおそうなんだ、おめでとう!と言おうとしたら、稽古場に来てない。えっ?と疑問を抱き聞いてみたら、その日の稽古がダンスの振り付けをする日で漆崎さんは出てないシーン。だからお休みです。

 えー! 驚きました。だって皆さん。1年に1度の誕生日。彼だってもうすぐ自分の誕生日だ、みんなにおめでとう!と言ってもらえると少しは期待していたはず、それがたまたまダンスの振り付け日と重なり、出番がないからお休みって、それは切な過ぎるだろ! もうその彼の間の悪さに私は天性のモノを感じました。

 7月16日、43歳! うるちゃん! おめでとうございます! その面白さを風化させないために、ここに書き記します。(落語家 柳家花緑、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■やなぎや・かろく 1971年、東京都出身。87年、中学卒業後、祖父、五代目柳家小さんへ入門する。前座名は九太郎。89年に二つ目昇進、小緑と改名。94年、戦後最年少の22歳で真打ち昇進、柳家花緑と改名する。古典落語はもとより、劇作家などによる新作落語や話題のニュースを洋服と椅子という現代スタイルで口演する「同時代落語」にも取り組む。ナビゲーターや俳優としても幅広く活躍する。

 【ガイド】

 ■舞台「南の島に雪が降る」 8月6~9日 東京:浅草公会堂。8月14~23日 名古屋:中日劇場。8月25日 福岡:キャナルシティ劇場。8月27日 大阪:シアター・ドラマシティ。

 ■企画展「水戸芸術館会館25周年記念事業 カフェ・イン・水戸R」 8月1日~10月18日 水戸芸術館 現代美術ギャラリー。

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