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新指導要領素案 高校で科目新設・再編 「歴史総合」で近現代の転換点学ぶ
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中教審の特別部会で、次期学習指導要領の改定骨格案について説明する文科省の担当者(奥中央)=2015年8月5日、東京都港区(共同) 2016年度中に中央教育審議会により改定内容が答申される次期学習指導要領について、文部科学省は5日、これまでの議論を踏まえた答申の素案を公表した。知識偏重から脱却すると同時に、思考力や表現力を育成する方針が示された。小学校で英語が教科として本格的に導入されるほか、高校の学習内容も大学入試の抜本的改革を視野に大幅に改定され、地歴や理数などの分野で新科目が設けられる見通しとなった。
新指導要領の改定は小学校が20年度、中学校は21年度、高校は22年度以降に全面実施される予定。
指導要領は約10年ごとに改定されており、「脱ゆとり教育」にかじを切った前回改定では、小中学校の学習内容を大幅に増やした。高校はほぼ手つかずで、記述力などが問われる大学入試改革を踏まえ全面的に改定されることになった。
素案は、日本社会を「将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会」と位置付けた上で、育成すべき能力として、(1)主体的な判断(2)議論を通じて力を合わせること(3)新たな価値の創造-の3つを提示。物事を多角的・多面的に吟味する論理的思考のほか、自国文化や異文化への理解を教育することの必要性を強調した。
小中学校では全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果、知識の活用に課題が指摘されている。素案では、学習方法について「何を知っているか」という知識偏重ではなく、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わるか」と活用を重視。高校では、自ら課題を発見し、解決する「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる学習方法の導入を前向きに検討する方向性を示した。
中教審では今秋以降、素案を基に、小中高校ごとや教科別に検討部会を設け、より具体的に議論する。
≪「歴史総合」で近現代の転換点学ぶ≫
文部科学省が5日に公表した新学習指導要領の答申の素案では、高校の地理歴史で世界史と日本史を統合し、近現代史中心に学ぶ「歴史総合」と、課題解決型学習の「地理総合」を新設、必修科目とする。また選挙権年齢の18歳以上への引き下げを踏まえ、高校の公民で新科目「公共」を必修化する。
現行の歴史科は、小中学校の社会科で日本史を中心に学ぶため、高校では世界史が必修、日本史と地理が選択科目になっている。
国立教育政策研究所による2005年度の教育課程実施状況調査では、日本史Bの両大戦期を扱った近代史分野で、生徒の9割近くが標準的な正答率を下回り、近現代史学習への課題が浮き彫りになっている。調査は旧指導要領に沿ったものだが、文科省は「この傾向は現在も続いている」と指摘する。
素案では世界史の必修を見直し、近現代史を学ぶ現行の「日本史A」と「世界史A」を組み合わせた「歴史総合」を新設。授業では、生徒らに日本と世界の動きを関連付けて理解させた上で、近現代の歴史の転換点などについて学習させるとしている。
文科省の担当者は「日本史か世界史か、という二項対立ではなく、『今の子供たちに必要な学びは何か』という観点で議論されることになる」と説明した。
地理分野でも、選択科目である「地理A」をなくし、必修科目として「地理総合」を新設。「最低限の地理の知識を持たずに高校を卒業する生徒が多い」(担当者)ことから、新科目では、生活する上で基本となる地図の読解能力や、国内外の各地域ごとの課題を把握し解決する力を育てるとしている。
いっぽう高校の公民科では、規範意識や社会制度を学ぶ「公共」を設けるよう検討することが求められた。授業では討論や模擬投票、模擬裁判、新聞活用などが取り入れられ、法曹界や報道関係者、財界人など多様な分野から講師を招く。次期学習指導要領のテーマとされる「社会に開かれた教育課程」の意義にかなった学習内容に位置付けられる。
授業で扱うテーマは就労や結婚、家族、納税、政治参加など多岐にわたる見通し。文部科学省によると、日本の高校生は海外諸国と比較して、社会参加の意欲が低い傾向があるとされる。「公共」の導入により、若者の自立心を育み社会参加の意欲を高めるとともに、立場によって意見の異なる課題について、議論や交渉を通して解決できる能力を培いたい狙いだ。
一方、素案は小中学校で2018年度以降に教科化される「道徳」についても触れ、「これまで軽視されがちだったと指摘される従来の道徳の時間を、検定教科書の導入により着実に行われるように実質化する」と明記。高校についても、小中学校の内容を踏まえ、公民科の指導内容の改定と合わせて検討する考えが示された。(SANKEI EXPRESS)