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欧州でローカルコンテンツ人気 新コンセプト誕生の濃厚な兆しか

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

欧州でローカルコンテンツ人気 新コンセプト誕生の濃厚な兆しか

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 「ヨーロッパではローカルコンテンツに人気がある。特徴的なのは関心が人に向かっていることだ。画像ダウンロード実績数をみると80%は人が主人公の写真。北米は75%。アジアでは37%しかない」

 画像提供サービスを行っている企業のレポートの一部だ。トレンドイメージとしては、アクティブに動きまわり、最新テクノロジーを使いこなしながら広範なコミュニティで活動する人である。物理的にはクルマを乗りまわすというより、自転車あるいはトラムなどの公共交通機関で人肌を感じる移動時間を大切にするタイプ。

 あまりにぼく自身の実感と合っている。

 6年ほど前から「ヨーロッパの目」というブログを書いているが、なるべく文章の間に画像を挟み込むようにしている。当然だが記事の内容に直接関係のある写真も使うが、そうでないものも多い。話題がヨーロッパ以外の地域が対象であってもメインの写真はヨーロッパを舞台にしている。

 「ヨーロッパ人の感覚からすると、このテーマはどういう位置になるか、どういうイメージを喚起するか」という観点から画像を選ぶ。その際、スポーツやファッションなど多様なフィールドにネタを求めるが、人が入っていることを重視する。

 その結果、レポートの傾向と同じような画像を選んでしまっていた。

 「選んでしまっていた」と表現した。ぼくが想定するヨーロッパのライフスタイルイメージがそう的外れでなかったのは良いのだが、嵌りすぎていた。もちろん、この種のイメージは現在の「欲求」を示しているわけでもあり、ヨーロッパ人が享受している生活が100%こうだ、というわけではない。 

 さてもう一点気になることがあった。この傾向が「ローカルコンテンツの人気はヨーロッパの内向き志向を表す」とのレポートの解説だ。「あまりに頭が古くないか?」と目を疑った。そこで一つ思い出した。

 ある日本の学者が、この5月にスイスで行われたカンファレンスに参加した。そこには世界各地の若者が来ていた。その方の感想がブログにこう書かれている。「ヨーロッパの若者たちはEU内のことに関心が強く内向きだとの印象を受けた。それに対して日本やアジアはグローバル志向だ」

 この文章を読んで、ぼくは強烈な違和感をもった。

 今の時代、ソーシャルネット上には世界に散らばる友人がいるだろうし、国際化を進める学校はいろいろな国の学生が留学で往来している。もちろん格安航空券のおかげで自ら出かける機会も多くなった。圧倒的にボーダーレスになっている。

 それは確かなのだが、ヨーロッパの若い人たちは、だからこそ自分たちの身の回りと少し離れた人たちとのコミュニティを大切にしていきたいとの思いを強くもつ。

 特に自分の住む都市の郊外に第三国からきた人が最低レベルの生活を余儀なくされる姿を目にし、さほど遠くもない村が過疎化に苦しんでいる様子に接しやすい。

 東京から2時間電車にのっても住宅街が続く風景とは違い、ヨーロッパではあらゆることがいっぺんに身近なシーンになる。そして他国の人たちとの交流が日常的にあるから、異なる文化の人たちとの付き合いの難しさも分かる。むやみにグローバルと騒がない。いわば身の程をわきまえている。

 この足が地についた実践的な態度を「内向き」と称してよいものだろうか。「誠実」とさえいうべきではないかと思う。何もヨーロッパの若者の肩をもつわけではない。ただ、ローカルに目を向けることが内向的であると判断する浅い見方にため息がでる。

 ぼくは20数年前、新しいコンセプトを生む現場に立ち会いたいと願った。そこでヨーロッパを生きる場として選んだ。他の地域より先端的な社会問題が浮上しやすく、時間軸を重視する地域でこそ新しい考え方が生まれやすいと考えた。そして、それはより現実的な文脈を踏まえて出てくる。

 ヨーロッパでローカルコンテンツのダウンロードが増えているとの現象を、新しいコンセプト誕生の濃厚な兆しとみたい。

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