東レは22日、愛媛工場(愛媛県松前町)で燃料電池向けの炭素繊維部材を生産すると発表した。50億円以上をかけ、炭素繊維をシート状にした「カーボンペーパー」の新設備を導入、電極の材料として2018年5月から生産する。燃料電池車(FCV)の普及に対応するのが狙い。
東レは現在、滋賀事業場(滋賀県大津市)でカーボンペーパーを少量生産し、トヨタ自動車が14年12月に発売した「ミライ」などのFCVに採用されている。
国内外の自動車メーカーが20年ごろにFCVの新モデル投入を予定するなか、需要がさらに増えるとみて本格量産に乗り出す。今回導入する設備は、滋賀事業場の約5倍の生産能力を持つという。
この日は、ほかにも炭素繊維事業の強化策を発表。約100億円をかけ、米国子会社がメキシコで運営する工場の能力を年産1万トン強に倍増させるほか、米サウスカロライナ州で17年の完成を予定する新工場についても、年内に追加増強を判断することを明らかにした。
同社は21日にも石川工場(石川県能美市)で、テープ状に細長くした炭素繊維複合材を、米ボーイングの中型旅客機「787」向けに生産開始している。従来のシート状の部材に比べて複雑な形状に対応しやすく、使用の無駄を減らせるとして、まずは胴体を製造する川崎重工業に納める方針だ。