理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダー(30)らが発表したSTAP(スタップ)細胞は2日、英科学誌ネイチャーが論文を取り下げたことで、存在の根拠を失った。「世紀の大発見」として脚光を浴びた発表から約5カ月。ずさんな欠陥論文に厳しい判断が下った。
哺乳類などの体は1個の受精卵から分裂を繰り返し、皮膚や心臓などさまざまな細胞に姿を変えて分化していくことで出来上がる。いったん分化した細胞は、体のどの組織になるか既に運命が決まっており、受精卵のような未分化の状態には簡単には戻らないとされていた。
だがSTAP細胞はマウスの体の細胞に弱酸性の刺激を与えるだけで、あらゆる細胞に分化できる万能性を獲得したとされた。生物学の常識を覆す発見として世界に衝撃を与えたが、発表直後から信頼性に疑問符が付いた。
ネイチャー誌が取り下げを決めたのは、論文の結論に関わるデータに欠陥があり、信用に足る説明やデータ提出もないと判断したためとみられる。