御嶽山噴火で犠牲となったのは山好きの会社員や登山者のガイドを務めるなど、自然を愛する人たちだった。
長野県塩尻市の会社員、林卓司さん(54)は、温厚で家族思いだったという。
「今回の思いがけない出来事で大変心を痛めております」
身元判明から一夜明けた29日朝、林さんの自宅玄関には妻の署名が入った張り紙がされていた。勤め先の同僚らが慌ただしく出入りしたが、遺族は精神的に動揺している状態だという。
関係者によると、今回の登山は夫婦一緒に登る予定だった。だが妻の体調がすぐれなかったため、林さんは「一人で行ってくる」と午前7時ごろに家を出たという。それが家族が見た最後の姿となった。
今春には地元で就職した一人娘のために、林さんは引っ越しを手伝いに行っていたという。今の会社に出向になる前に勤めていた地方銀行で同期入行だった男性(55)は「言葉にはあまり出さなかったが、家族を思う気持ちは人一倍強かったのでは」と声を詰まらせた。