途上国支援の世界に足を踏み入れて26年になる。これまでに訪れた国は36カ国。バングラデシュ、ネパール、アフガニスタン、インドには計10年駐在した。日本では想像もつかないような厳しい状況下で、一筋縄ではいかない人たちと付き合った。しかし、思い返すとなぜか顔がほころぶ。
特に思い入れが強いのは、バングラデシュだ。青年海外協力隊の隊員などとして計5年4カ月駐在し、農業・農村開発に取り組んだ。
正直、はじめはこの国を好きになれなかった。平気で嘘をついたり嫉妬深い人が多かったからだ。現地人の上司と衝突することもあった。ある時、事業の進め方で口論になり、「お前にはもう一言もしゃべらせない」と強い口調で命令された。そこで、自分の意見を(現地語のベンガル語で)紙に書いて上司の目の前に掲げた。しばらくの間、私と上司は筆談で会話することになった。今思えば、大人げなかったと思う。しかし、その地域を良くしたいと心から願っていたし、自分の意見は正しいと思っていたからこそ、めげなかったのだ。