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イタリアにおいて(もちろん、その他の欧州諸国も同じだが)、新卒での就職機会は極めて限られている。コネか中途採用が主流のマーケットにあって、「何も業界のことは分かりませんが、誠心誠意頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします」と頭を下げても職を得るのは難しい。就職するには、皮肉な話かもしれないが「職業経験」が必要なのだ。
ベネトングループの創立者であるルチアーノ・ベネトンは苦労人であったが、この「職業経験」がないことが如何に若者の夢を奪い、経験をもてばどんなに道が開けやすくなるかを痛感していた。そこで「経験をもつ」ために用意された場所が、イタリアのトレヴィーゾにあるファブリカである。
ファブリカはグループ本社とは別個の組織で、コミュニケーション・リサーチセンターという機能をもつ。1年だけ在籍する世界中から選ばれた25歳以下の約40人のクリエイターたちは、「ファブリカという学校の奨学生」である。居住国からの往復航空券や家賃あるいは毎月の「小遣い」をもらい、実践トレーニングを受ける。それでも財団でもなく一民間会社である。
ベネトンのファッションデザインには拘わらないが、ケースに応じて協力することもある。最近では中国主席と米国大統領など、世界各国の反目しあう(とされる)リーダー達がキスする「UNHATEキャンペーン」ポスターを作ったのがファブリカだと説明すれば「ああ、あれを作った人たちか!」と分かるだろう。