岸田文雄外相は17日、イランの核開発制限履行を歓迎し、「この重要な進展を契機として、イランとの伝統的友好関係を一層強化していく」との談話を発表した。政府は今後、欧米と協調して実施していた制裁の解除手続きに入る方針で、大幅に後退したイランとの関係の再強化を急ぐ。
日本が実施している制裁は、核開発活動に関与する団体や個人の資産凍結や銀行との取引制限、石油・ガス分野の新規投資の中止など。国連安保理決議を受けて平成19年に始めて以降、段階的に強化してきた。
日本としては経済関係をテコにイランとの関係を再強化し、エネルギー資源の権益確保や市場開拓につなげたい考え。日本企業が75%の開発権益を持ちながら、米国の強い要請を受け22年に撤退を余儀なくされたアザデガン油田についても、日本撤退の穴を埋めた中国企業が26年にイランと契約を解消していることから、日本企業の再参入の可能性が浮上している。
こうした動きを支援するためにも、日本政府は投資協定案の承認を今国会で求め、早期の発効を目指す方針だ。投資協定は昨年10月に岸田外相がテヘランを訪問し、交渉開始から約1カ月で実質合意している。
ただ、イランはサウジアラビアとの対立を深めており、日本としては中東情勢に配慮しつつ、昨年1月の中東訪問の際に安倍晋三首相が掲げた「中庸」路線を軸としたバランス外交でイランとの関係構築を図る考えだ。(田北真樹子)